それから、お盆休みと、冬休みに必ずルナとアユミがやってくる生活になった。韓国では正月休みやお盆休みの習慣はないが、エルバンは勤め先に頼み込んでその時期10日間の休みを取る。

 ルナは格安航空会社のチケットを数ヵ月前から予約しておく。すると2人で9万円ぐらいで往復できるのだ。

 その年、2023年末の冬休みはクリスマスを一緒に過ごした。山でそり遊びをして、年明けのお正月にはアユミの誕生日を一緒に祝った。3人でいっぱい笑った。しかし、翌日には別れねばならなかった。

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あっという間の1週間

 そして長い7ヵ月を経て、2024年8月のお盆休みが始まろうとしていた。ルナとアユミが韓国のエルバンのところに来るのは今回で3回目だ。わたしも同行させてもらうため、中部国際空港でルナとアユミに合流した。

 ピンクのリュックサックを背負ったアユミがママに手をひかれてやってきた。「パパ行くよ、パパ行く」。飛行機に乗る前からアユミは興奮気味に何回も繰り返している。久しぶりにパパのところに行けることになり、うれしさを抑え切れないのだ。

 2時間のフライトで、仁川国際空港に到着。モノレールに乗り、入国審査や税関のあるビルに着くと、アユミはそわそわしだし、歌を歌い、スキップし始めた。税関のゲートを出ると、キョロキョロしている。しかし、なかなかみつからない。そして、ついにみつけた、その人。アユミはママの手を離して全力で駆けていく。

 

 パパの胸に思い切り飛び込むと、パパはきつく抱きしめてくれた。パパの涙がアユミの頬にこぼれた。7ヵ月ぶりに再会した家族は、まずソウル市内にある、エルバンの行きつけのトルコ料理のレストランで、ケバブをおなかいっぱい食べた。トルコ特有の伸びるアイスクリーム「ドンドゥルマ」も出てきた。アユミの大好物だ。そしてソウルから車で約1時間半のポチョンの街に着いた。

 エルバンはこの街でアパートを借り、働いているのだ。山や渓谷に囲まれたポチョンは風光明媚な街だ。夏はソウルに比べて涼しく過ごしやすいが、冬は零下20度にもなる厳寒に耐えねばならない。

 その日、アユミは興奮し、パパと遊んで午前1時ごろまで寝なかったという。ベッドではパパに抱きしめられ眠った。エルバンが強制送還されるまでは毎日そうやって眠っていたのだ。

 翌日は、渓谷をせき止めた水遊び場に遊びに行った。

 救命具をつけたアユミは、パパに抱かれずっとニコニコしている。その様子をルナが、ほほえんで見守っている。