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もはやクオリティが安定している麻生太郎氏の失言

麻生太郎 副総理兼財務相
「障害者の数も限られていますから、この数を取り合うみたいな形になると、また別の意味での障害、弊害が起きる」

『報道ステーション』 8月28日

麻生太郎副総理 ©文藝春秋

 今後、政府は目標の雇用率達成を目指して障害者を雇用していく方針を明らかにした。それに冷水をぶっかけたのは麻生太郎財務相だ。

 水増し数がもっとも多かった国税庁を所管する麻生太郎財務相は「あってはならないことで重く受け止めている」と述べる一方(朝日新聞デジタル 8月28日)、記者会見ではこのような発言を行った。障害者雇用する気がさらさらないように見える。

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 そもそも中央省庁が障害者雇用の水増しについて政府が調査を始めたのが8月16日のこと。共同通信の取材に対して不適切な算定を明確に否定したのは警察庁だけで、農林水産省、総務省、国土交通省の三省は不適切な算定の可能性があると回答したものの、大半の省庁は「コメントできない」(財務省)、「厚労省の公表までは回答しない」(法務省)、「申し上げる段階にない」(防衛省)と言葉を濁し続けた(中日新聞 8月18日)。

 安倍晋三首相が加藤勝信厚労相から報告を受けたのは発覚から1週間以上経った24日で、公表が行われたのは28日だった。とてもスピード感のある対応とは思えない。

「自分たちが国の戦力ではないと言われているような出来事」

 水増し問題について、厳しい批判が相次いでいる。日本障害者協議会代表の藤井克徳氏は「障害者への裏切り。民間企業での雇用促進にも冷や水をかけるものだ」と指摘(YOMIURI ONLINE 8月31日)。障害者を雇用する生花店ローランズの福寿満希代表は「自分たちが国の戦力ではないと言われているような出来事」と厳しく批判した(『報道ステーション』8月28日)。

 自身も脳性まひの子どもを持ち、『障害者の経済学』などの著書がある慶應義塾大学の中島隆信教授は、「嘘をついたのが一番良くなかった」「民間企業でもかなり工夫し、苦労している中、役所に“雇え、雇え”と言うだけでは、なかなか難しい。労働時間が長く働き方も変則的で、人事が硬直的なところにどうやって入れていくかという知恵もセットで出していかないといけない」とコメントしている(AbemaTIMES 9月3日)。10月に発表される第三者委員会の検証結果に注目したい。