中央省庁による障害者雇用の水増し問題が拡大の一途だ。8月28日に行われた厚生労働省による発表をきっかけに、中央省庁をはじめ、国会、裁判所、地方の行政機関などで次々と障害者雇用の水増しが明らかになっている。

 過去に死亡した職員や強度近視の職員を障害者として参入するなど、悪質な手口も明らかになった。閣僚をはじめとする当事者は今回の事態をどう捉えているのだろうか? 声を集めてみた。

加藤勝信厚労相 ©文藝春秋

加藤勝信 厚労相
「率先して障害者を雇用すべき立場にありながら、こうした事態となったことは誠に遺憾であります。また、障害者雇用政策を推進する立場としても深くおわびを申し上げます」

テレ朝NEWS 8月28日

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 先月28日の厚生労働省の発表によると、国の33の行政機関のうち27機関で3460人もの障害者雇用が水増しされていた。これまで中央省庁が障害者として雇用していると公表していた約6900人の職員の半数以上にあたる。

 障害者雇用促進法では、行政機関に対して障害者を2.3%以上雇うように義務付けているが、実際の雇用率は1.19%に過ぎなかった。法定雇用率を下回った場合、民間企業は不足者1人につき納付金を月に5万円支払わなければならないが、国や地方の行政機関にはこのような罰則はない。範となるべき省庁が率先してルールを破っていたことになる。

 加藤勝信厚労相は同日の記者会見で「誠に遺憾」と謝罪したが、原因については「故意か誤解に基づくものか、今の段階で判断するのは困難」と言及を避けた(中日新聞 8月29日)。原因究明は弁護士ら第三者の検証チームに委ねることになる。

水増しは全国の教育委員会や、行政機関でも

 今後については「今年中に雇用率に満たない人数を雇用する努力をしてもらいたい」と強調したが、実際はそれどころではないだろう。障害者雇用の水増しが発覚し続けているからだ。

衆議院 ©iStock

 7日、新たに衆参両院と国会図書館、裁判所などで計400人以上の水増しが行われていたことが明らかになった。

 そのほか、全国の教育委員会や行政機関でも水増しが続々と発覚している。埼玉県教育委員会では143.5人、千葉県教育委員会では82人、奈良県教育委員会では54人、栃木県教育委員会では39人、大分県教育委員会では66人、神奈川県では知事部局と県教育委員会の合計144人、熊本県でも県職員と教育委員会の合計38人……と、数えるとキリがないほどだ。現時点では少なくとも37府県で不適切な算入が行われていたという。一体なぜこんなことが起こったのだろうか?