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【イベントレポート】誰が、いつ、どこで、誰と、どんな行動を? 法人営業-勝利の方程式 ~ 営業は「もっと」強くなる。データ活用、組織変革、人財育成の再定義 ~

 8月31日(水)までの期間限定】営業リーダーズカンファレンス アーカイブ動画の視聴はこちらから

 新型コロナウイルスの収束がなかなか見通せない中「対面」から「非対面」へ、「経験と勘」から「データ基点」へと、営業スタイルは大きく変化している。

 コロナ禍以前より「働き方改革」「生産性の向上」への関心は高まりをみせており、ウィズコロナによりその変化は加速し、対応が急務となっている。いずれコロナに翻弄されない日常が戻ってくるはずだが、リモートであっても効率的・効果的な営業が可能であることを実証している企業も多く、デジタルを活用した営業活動への移行は定着していくと予想されている。

 しかしながら、営業部門のデジタル化には課題も多い。大きな成果を出す企業がある一方で「デジタルツールを導入したけれども効果が出ない」「部門内のコミュニケーションがうまく取れていない」「成功体験や失敗の共有がうまくできておらず、組織的な営業戦略の構築や人材育成ができていない」「データを有機的に活用できていない」「個人の成果に頼ってしまい、属人化に危機感を感じている」など、改革の難しさを実感している企業も少なくない。

 人材不足が大きな経営課題としてのしかかる企業のリーダーにとっては、個々人や組織としての生産性を上げ、利益率の向上を図っていくことが急務だ。あくまでもデジタル化は「手段」であって「目的」ではない。営業を改革していく中で、何を達成したいのか、何を変えたいのかを見据え、全社一丸となって勝ちパターンの仕組みづくりや、全社一体組織として力を引き出す仕掛けづくりに取り組むことが不可欠といえるのではないだろうか。

 本カンファレンスでは、法人営業‐勝利の方程式 ~ 営業は「もっと」強くなる。データ活用、組織変革、人材育成の再定義 ~をテーマに、課題の発見、解決の実践知、さらなる飛躍に向けた挑戦の道筋などについて、成長企業の実践者やプロフェッショナルの講演を通じ考察する。

■基調講演

 行動経済学からひも解く、稼ぐ営業組織の創り方
~ 営業をもっと強くする、データ活用、人材育成 ~

門倉さん①
 
エコノミスト、BRICs経済研究所 代表
門倉 貴史氏

 門倉氏は1971年生まれ。95年慶応義塾大学経済学部卒業、同年銀行系シンクタンク入社。99年日本経済研究センター出向、2000年シンガポールの東南アジア研究所出向。02年から05年まで生保系シンクタンク経済調査部主任エコノミストを経て、現在はBRICs経済研究所代表。

 営業強化の流れを妨げるいくつかの要因を、門倉氏は行動経済学の視点から挙げた。

「現状維持バイアス=status quo bias」。これは、変化や未知のものを避けて現状維持を望む認知傾向だ。変化を“安定の損失”と認識し、現在の状況に固執してしまう。

 営業や研究開発のさまざまな場面でも、失敗を恐れ挑戦を避けるデメリットは現れる。それを回避し正しい判断を行うには、データ分析により最悪の結果になったときの損失を数値化する、関係者以外の第三者からアドバイスを受ける、といったことが奏功する。

 集団で合意形成をすることでかえって不合理な結論や行動を引き出してしまう「グループ・シンク(集団浅慮)」の罠にはまることも多い。集団凝集性が高い組織(上下関係が厳しい/終身雇用)や、集団が過度のストレスにさらされている場合(ノルマの達成/トラブル対処)そしてリーダーや専門家といった特定の人に権力が集中している場合などに、悪しきグループ・シンクが発生しやすい。集団を小グループに分けて議論を行い、少数派も意見を出せる仕組みをつくることで集団浅慮の発生を防ぐことができる。

「後知恵バイアス(hindsight bias)」すなわち、事前には予測すらできなかった事象を事後には必然であったかのように判断してしまう認知バイアスも多く見られる。例えば、営業の現場で確度が高かった案件が成約しなかった際、営業には運の要素があることを認識し、結果でなくプロセスもきちんと評価することで、営業マンのモチベーションを下げる後知恵バイアスを排除することができる。

 また、以下の二つにも気をつけなければならない。関連情報を広範に収集せずに思い出しやすく入手しやすい情報に頼って判断する「利用可能性ヒューリスティック(availability heuristic)」と、その人が抱く代表的・典型的なイメージを物事の判断に用いてしまう「代表的ヒューリスティック(representative heuristic)」である。この二つを防ぐには、手に入りやすい情報だけに頼らず、少し手間をかけて情報を集め、直感的な印象に頼らずに具体的な客観的な数字を確認することが重要だ。

門倉さん②
 

 営業力向上のためには、先入観や偏見といった「バイアス」の存在を常に意識することが大切である。トップダウンより、フラットな組織を作ってのボトムアップが有効な時代だ。

 門倉氏は、行動経済学を応用して社員の生産性を上げる要諦も挙げた。
・最も会社に行きたくない曜日、最も仕事に対するモチベーションが高まる曜日を把握し業務を指示配分する(ただし、文化や民族によりそれらの曜日は異なるので注意)
・労働生産性を伸ばすコツは、職場での上司と部下の円滑な人間関係や、職場での注目のされ方であることを意識する(かつては従業員は賃金や勤務時間を重要視していたが現在は異なる場合も多い)
・テレワーク導入による通勤時間短縮と、その効用である労働生産性の向上を意識する(通勤時間の短縮は、通勤時間の長い日本人には特に有効)

 ICT(情報通信技術)導入による労働生産性向上も有用。eコマース機能を持つホームページの開設や、SNS利用、インターネット広告など「マーケティング分野でのICT活用は生産性改善につながる」と最後に強調し講演を締めくくった。

■課題解決講演&対談

 コクヨに学ぶ 強い営業の仕組みづくり
~ 部門の壁を越える!データ活用の秘訣 ~

大橋さん
 
コクヨ株式会社
ファニチャー事業本部 提案マーケティング部 デジタルプロモーショングループ
大橋 真人氏

 大橋氏は2003年コクヨ入社。ITを利用した新規事業の開発やマーケティング業務などを経験後、12年よりファニチャー事業部へ異動。ファニチャー事業部では、販売マーケティングや研究開発などを担当し、18年よりウェブマスターとして、WEB業務全般の企画立案・運営に携わる。20年からはデジタルプロモーショングループにて、デジタルマーケティング業務を担当。

柳田さん
 
Sansan株式会社
ビジネス統括本部 GB営業部 副部長
柳田 栄一氏

 柳田氏は大手医薬品卸に新卒入社後、更に厳しい環境での成長を求めリクルートに転職。約6年半、企業の採用支援を行う。世の中の働き方を変える新しいチャレンジを!との思いから、2013年に当時約70名のSansanに入社。

 コクヨの2021年12月のアンケート調査によると、新型コロナウイルス感染拡大前と現在との比較において、
① テレワークの利用者は6割。「全日出社」が39.3%。「週1~2日テレワーク」が全体の28.6%。
② 生産性の変化については、「以前から変わっていない」が44.7%、「少し下がった」25.2%、「少し上がった」16.2%。
③ 変化する働き方としては「在宅勤務の回数とネットコミュニケーション量が圧倒的に増加」「ため息の回数増加」「上司とのコミュニケーション機会/笑う回数/仕事仲間とのコミュニケーション量が減少」
したことなどが大橋氏から冒頭、紹介された。

 コクヨは「ヒト中心」のオフィス提案を長く行ってきており、さまざまなデータを活かしつつ常に半歩先の未来を予測し、実践・実験を品川にある自社のライブオフィスで行ってきたことに大橋氏は言及。BtoBビジネス主体となったコクヨの現在のマーケティングの仕組みの変化について、2020年からはターゲット選定から従来は営業部門が担当していた「リード獲得」までをマーケティング部門が行うようになったことを紹介した。

 リード獲得に向けて新たに注力した施策は、
① 集客手段の充実(WEB広告、SEO対策、ランディングページ)
② コンテンツの充実(ホワイトペーパー、オンデマンド動画、ウェビナー、大型イベント、オフィス見学、メール配信)
③ 業務効率化のためのデジタルツール活用(MA/SFAツール、Sansanの各種ツール利用)
の三点で、③のデジタルツール活用については業務効率化に大変効果があり、例えばイベント時は、集客~イベント効果(オンラインに限る)~イベントフォローの3つのステージで活用していると述べた。

課題解決セッション
 

 コクヨは、約10年前にSansanを営業間での情報共有、顧客企業の組織体制の把握、各種イベントの宛名作成業務の効率化、以上3つを意図して導入した。現在も営業部門、マーケティング部門双方で大いに活用し、業務の効率化に役立てている。

 Sansanの柳田氏は、名刺管理からスタートしたSansanが、2022年現在、「営業を強くするデータベース」や「営業DX」実現にさらに注力する“営業DXサービス”へと進化していることを強調。帝国データバンクなどの企業・人事データベースを搭載しており、実用的な接点データベースを構築でき、システム連携による利用シーンの拡大を実現することを説明した。大橋氏はSansanを実際に長期にわたり利用しての社内導入のコツやメリットをコメントし、今後の展望も披露した。

 最後に「営業強化のためには“営業職”だけを強くするだけではなく、川上にあたるマーケティング部門を強化し、DXによって社内外に存在する情報を一つにすることで利用企業ならではの営業を強くするデータベースを構築することが大切」と柳田氏がまとめて、対談を終えた。

 ※本セッションのアーカイブ動画はこちらから【8月31日(水)までの期間限定

■特別ゲスト対談

 勝つためには準備がすべて
~ラグビーとビジネスの共通点 - お互いを信頼することで組織は強くなる~

五郎丸さん
 
静岡ブルーレヴズ株式会社
CRO(クラブ・リレーションズ・オフィサー)
五郎丸 歩氏
生島さん
 
聞き手
スポーツジャーナリスト
生島 淳氏

 五郎丸氏は1986年生まれ。佐賀工高、早大を経て、2008年にヤマハ発動機ジュビロに入団、ジャパンラグビートップリーグ13シーズンにおいて得点王3回、ベストキッカー3回、ベスト15を5回受賞。ラグビートップリーグ通算最多得点(1282点)記録保持者。ラグビーワールドカップ2015でも活躍し、強豪南アフリカからの歴史的勝利に貢献、大会ベスト15にも選出された。2021年度シーズン限りで現役を引退。日本代表キャップは57。

 冒頭、五郎丸氏は所属する静岡ブルーレヴズでの役割を「CRO(クラブ・リレーションズ・オフィサー)とは“何でも屋”です」と語りアイスブレイク。現在学んでいる早大大学院での経験や静岡ブルーレヴズでの仕事、取り組みを報告。ラグビー新リーグ「ジャパンラグビーリーグワン」に加わっている事業会社の運営やチケット販売、スポンサー獲得など、クラブとステークホルダーとの関係構築に携わる現在の仕事を詳しく紹介した。
 
初年度に最も力を注いだのはチケット販売の仕組み、システム作りとのこと。チケット販売前後で集まる、購入経路・履歴やグッズ販売などを含むビッグデータを有効活用し、顧客=ファン、来場者の快適性・利便性を高めることを第一に取り組んだ、と述べた。以下、五郎丸氏のコメント要旨。

「“後悔が残らないように最高の準備をしたい”という意識は、現役時代から常に持っています。引退してから大学院に入ったのは、一人の選手として感覚的に物事を捉えられ表現もできていたことを、ビジネスの世界で多くの人や組織に的確に論理的に伝える力を得なければと考えたから。大学院でさまざまな経歴や立場の人から大いに刺激、知見を得て、充実した日々を送っています」

スペシャルゲストセッション①
 

「毎日の、一つひとつの仕事やコミュニケーションの積み重ねが信頼の醸成につながります。勝つことで最後はまとまれるラグビーチームとは違い、ビジネスの世界は細かいコミュニケーションが大切で、言葉選びひとつにも非常に気をつけています。また、信頼感の醸成のために、自分に与えられた仕事はしっかりこなす、任せられたことは夜何時になろうとやり切るといったことを意識しています」

「今年集まったビジネス上のデータをしっかり分析し、来期はどういった顧客ターゲットを狙ってチケット販売を始めとする事業を拡大していくのか、考えていきたい。ファンクラブの盛り上げ方も含め、課題が山積だからこそ面白い。オール静岡、静岡唯一のプロ・ラグビークラブにしかできない世界観を作り上げたいです」

「リーダーはひとりひとりを説得する時間はありません。方向性を示し、組織が同じ一定の方向を向きたくなるように導いていくのがリーダー。何のためにこれをやっているのか、は常に分かるように明確にしておきたい。迷ったときに原点に立ち返れるように」

「信頼感で結ばれた強い“ワンチーム”は、1年程度の短期間では到底できません。お互いが主張し合い鎬を削り争って、時に衝突しての最終形態です。会社組織の中でのぶつかり合いはなかなか難しいですが、きれいごとだけで済ませず、衝突を過度に恐れない方がいいと思います」

「Sansanは利用していますよ。携帯電話で名刺を読み込むだけでデータベースに入るのでとても便利。何人かにまとめて御礼メールを送るときに手で打たなくていいのは、間違いもなくていい。いまの時代利用できるツールは使ったほうがいいです」

「ラグビーのワールドカップは来年フランスで開催され、その後オーストラリア、アメリカ、ヨーロッパなどを経て2039年に日本に再びワールドカップがくるかもしれない。招致活動や運営においてリーダーシップを発揮できるように研鑽を積みたい。2039年にラグビー界を代表している人間のひとりになりたい。“明るく考えるも暗く考えるも自由”なので、僕は明るく考えます」

スペシャルゲストセッション②
 

 ※本セッションのアーカイブ動画はこちらから【8月31日(水)までの期間限定】

2022年5月17日(火) オンラインにて開催・配信
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source : 文藝春秋 メディア事業局