外交は“気取った友達付き合い”ではない。交渉と称する譲歩で国益を失ってはならない
十数年前、ある外交官と会食をする機会を得た。指定されたのは、都内最高級ホテルのひとつだった。知人の学者と一緒に行ってみると、会合の場は立派な個室で、お昼からフルコースが待っていた。外交官の彼は注文した白ワインを試飲して、ボーイにこう命じた。
「あと六分、冷やして」
なぜ、日本の外交官はかくも気取るのだろう。仕事柄これまでに多くの国の優秀な外交官と会ってきたが、彼らは相手への配慮と同時に、むしろ骨太さを感じさせる。
外務省主導の今回の訪朝団の不甲斐ない結果を見て、わが国の外交官は大丈夫かと思わせられ、つい、つまらない話を思い出した。
十月二十七日、政府の拉致被害者再調査のための訪朝団が北朝鮮・平壌の地を踏んだ。交渉を途切れさせないことが主目的になったかのような訪朝には既視感と疑問がつきまとう。それでも、被害者救出に向けて一歩でも新しい展開があってほしいとの思いで結果を待った。
しかし結果は、北朝鮮側から遺骨収集、日本人妻の帰国については積極的な報告はあったものの、肝心の拉致問題では「一刻も早く結果の通報を」と日本側が求めるにとどまった。残念だが予想通りだった。
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source : 文藝春秋 2014年12月号