刑務所から一度に発送できる上限枚数の便箋に、びっしりと埋め尽くされた文字。
「石丸さんにとって、田中容疑者の名前を見るだけでも耐えがたい苦痛であるものと感じました。いわゆる“トラウマ”を抱えて生きていく運命を背負わせてしまった私たち加害者の罪は重いです」
差出人は、男児への性加害で服役中の元ベビーシッターの男性だ。

石丸さん――石丸素介(42)は、小学校時代の担任教師による性被害の事実と後遺症の損害が、裁判所によって認められている。
加害者である元教師・田中耕一郎容疑者(75)は、このたび、別の男児に対する児童買春・児童ポルノ法禁止違反(製造)容疑などで逮捕された。現在は完全黙秘の状態だ。
男性は、田中と同じく「多くの男児に性加害をして」きた立場だ。小児性愛症(ペドフィリア)という病だと自認してもいる。
だが獄中で、石丸をはじめ性被害者が声を上げる姿を追った『沈黙を破る 「男子の性被害」の告発者たち』(文藝春秋)を読み、自身の被害者たちを思って呆然としたという。性被害に遭った男児が成人しても苦しむ現実を、初めて詳しく知ったからだ。
今年1月、筆者の元に送られてきた最初の手紙には、こんな決意が綴られていた。
「次は私が、小児性愛や依存について実態を訴え、沈黙を破る番だと思っています」
子どもへの性加害を繰り返す者の再犯を防ぐには、どうしたらいいのか。
今年12月には、子どもと接する職に就く人の性犯罪歴を雇用側が確認する「日本版DBS」の運用が始まるが、その実効性を加害当事者はどう見るのか。
償いのあり方を探っている最中だという男性の声を、手紙での取材から紹介する。

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秋山 千佳 (ジャーナリスト)
田中容疑者の行為を「うらやましいと思った」
「私は多くの子に時限爆弾を仕掛けてしまいました。しかもそのトラップを解除したくともできず、またその方法もわかりません。自分でやっておいて何を言っているんだと思われるかもしれません。今はただただ、自分の無力感に打ちひしがれ、罪の重さとその十字架を背負っていかなければと、痛感しております」
子ども時代の性被害のトラウマを「時限爆弾」と表現する当事者は、男女問わずいる。被害の瞬間や直後ではなく、後になって深刻な影響が表れることが珍しくないからだ。男性には被害者のその表現が胸に刺さったらしい。

田中の今回の事件の被害者である男児たちには、今のところ、目立った影響は出ていないそうだ。だからといって、時限爆弾がこの先もずっと弾けないとは限らない。
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