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「新宝島」を音ハメしたくなる理由を、感性工学の研究者が解説してみた

黒澤明、庵野秀明も使った「音と画の対位法」

2019/02/24

「音ハメ動画」というのをご存じだろうか? 音ハメ動画とは、ダンスや運動の動画などに別の音楽をはめ込んで、SNS上で投稿されているものだ。

 2018年末から2019年にかけて、この音ハメ動画にサカナクションの楽曲「新宝島」がよく使われ、バズっている。なぜ、「新宝島」が音ハメ動画に適しているのか、映像と音楽との調和の関係から考えていきたい。

SNS上で人気の「新宝島」音ハメ動画にはアンパンマンが踊るものがある ©時事通信社

映像と音楽の調和には2種類ある

 私は、映画、アニメ、ゲームなど、映像と音楽が組み合わされた作品について、感性工学的研究を行っている一人である。映像と音楽とが調和している、つまりマッチしている、ということには2種類がある。

 一つは構造的調和と呼ばれるもので、映像の切り替えやカット、映像の動きのタイミングが音楽のタイミングと合致していることによる調和を指す。もう一つは、意味的調和と呼ばれるもので、映像と音楽が持つ感情的性質が合致していることを指す。

 ダンスや運動動画の音ハメは、音楽のリズムに動画のタイミングを合わせたもので、まさに構造的調和が高いものである。音ハメ動画において、音楽の時間的操作をするとリズム・テンポが崩れるので、映像の方のタイミングをもとのものから少しずらすことが必要な場合がある。最近の映像編集ソフトでこのような映像の時間的操作を簡単に行えるようになったことが、音ハメ動画が流行するようになった一因だろう。

「新宝島」の音楽的特徴と構造的調和

「新宝島」のオリジナルPVでは、小さいステップ、小さい手の振りでサカナクションのメンバー達が体を揺らして踊るバックで、ポンポンを持ったチヤリーダー風の少女達が、これまた動きの小さな振りで踊っている。これは、昭和時代の歌謡番組において、しばしば歌手の後ろでスクールメイツと呼ばれるチヤリーダー風の少女達が踊っていたことを意識してのことだと思われる。

 一方で、この楽曲は158 BPM(Beat Per Minute)、つまり 1分間に158拍という速いテンポで演奏されている。158 BPMというテンポは、オリジナルPVのような小さな動きのダンスに合わせてた場合にはキレッキレ感が感じられない速度である。