個性的な人柄は言葉にも表れる
会見では、その個性的なキャラゆえに発言やシーンが際立つことがある。突き放したような怜悧なクールさと熱く語る真面目さ、誰にも媚びず縛られない強さと親しみやすい人間味が共存し、良くも悪くも世間は彼に魅了された。時代の閉塞感を打ち破る象徴のように、ホリエモンブームが沸き起こる。
今では日常的に使う「想定内」という言葉も、そんな彼が言ったからこそインパクトがあったのだ。
平成17年(2005年)2月、当時、ライブドアの社長だった堀江貴文氏は、シャツにジャケットを羽織った姿で突然会見を開き、ニッポン放送の株を35%買い取ったと公表。「僕だったらもっとうまくできるな」と射るような目を向け、冷ややかな口調で痛烈に経営陣を批判した。
ニッポン放送株を巡るライブドアとフジテレビの争いでは、メディアに何を聞かれても、斜に構えてぶっきらぼうに「想定内です」と応える姿が印象的だった。自社について「時価総額世界一を目指す」と夢を語るようにではなく、それが当然だと言わんばかりの口ぶりや態度も人の心を惹きつけた。
その後、ライブドアの粉飾決算により実刑判決となるが、平成25年(2013年)3月に仮出所。すると、堀江氏は仮出所の記者会見を開き、痩せた姿で現れて世間を驚かせた。世間の想定の範囲外をいく人物なのだ。
「聞いちゃったと言われれば……」
「お金儲けは悪いことですか」
もう1人、その強烈な個性から発せられた言葉が印象的だった人物がいる。抑揚をつけた早口でまくしたてる話し方は、彼の主張や感情の動きを強調させ、鋭く断定的な物言いは投資家としての能力や自信を印象づけていた。
世間的には情け容赦なく経営者を批判し、利益を追求していくという印象が強かったと思う。だからこそ会見で、一瞬、強張ったような当惑したような複雑な表情を見せ、トーンを抑えた声で記者らに問いかけたことが意外に思えたのではないだろうか。
平成18年(2006年)6月、村上ファンドの代表だった村上世彰氏が会見を開いたのは、証券取引法違反容疑による逮捕当日だ。インサイダー取引について「宮内さんがそら行け、やれ行けニッポン放送だというのを」と特徴のある大きな声でまくしたてながら、大きな目をぎょろぎょろと動かす。「聞いちゃったと言われれば聞いちゃってるんですよね」と、トーンを落とすと口をつぐみ視線を落とした。
いつもの攻撃的な口調や好戦的な表情が消え、悲しそうな寂しそうな表情が浮かんだ。モノ言う株主と称されていた村上氏だけに、いつもと違う彼の口調と表情が印象的だった。