スポーツ紙の醍醐味は「誰の言い分なのか」読みくらべること
スポーツ新聞は芸能記事も読みどころのひとつ。きのう芸能界で何が起こったのか? を教えてくれる。各紙には芸能の担当記者がいて言わば「広報」の役割も果たしている。
これをもって事務所の言い分を垂れ流しているというのは簡単だが、そこから「誰の言い分なのか」「世の中にどう思わせたいのか」と読みくらべるのがスポーツ紙の醍醐味だと私は思う。
3年前のSMAP解散報道なんてまさにそうだった。内部の人間への食い込み方がスポーツ紙によって異なり、とてつもない情報戦を連日ワクワクして読んだ。※詳しくは拙著『芸人式新聞の読み方』をお読みください。
今回の「宮迫会見拒否 逃げた!」記事で考えるべき点はどこか。スポーツ紙に対してのツッコミより「これまで芸能界はこの形でオーケーだった」というシステムそのものについてだと私は思う。そこにしみじみする。関係者の情報やコメントだけで成り立っていたものが当事者の発信によってひっくり返されることは今後も起きるだろう。
朝日おわび記事からは「安倍首相にやられたあああ」という感情が
続いて振り返りたい「関係者」物件は、朝日新聞の「ハンセン病家族訴訟 控訴へ」(7月9日)である。
この日の一面トップだったが数時間後に安倍首相は控訴をしない方針を表明した。つまり朝日の一面と逆の結果が出た。
なぜ朝日は一面トップで自信満々に「控訴へ」と書いたのか。次のコメントがあったからだ。
《政府関係者が8日、明らかにした。》(朝日7月9日)
政府関係者が言うのだから、との判断があったのだろう。しかし結果は「控訴せず」。
朝日は翌日「本社記事 誤った経緯説明します」とおわび記事を出した。
抜粋する。
《法務省や厚生労働省、首相官邸幹部は控訴するべきだとの意向で、あとは安倍晋三首相の政治判断が焦点でした。》
《8日、「ハンセン病関連で首相が9日に対応策を表明する」という情報とともに、控訴はするものの、経済支援を検討しているとの情報を得ました。》
《さらに8日夕、首相の意向を知りうる政権幹部に取材した結果、政府が控訴する方針は変わらないと判断しました。》
さて、これらを読むとお詫びしている感じなのだが行間から「安倍首相にやられたあああ」という感情が伝わってくるのは私だけだろうか。なんか悔しそうなのだ。