宇宙からも見える「東京の夜景」
「とくに印象的なのは昼間と夜の違いです。昼間は台風であったり、砂漠に吹く強い風であったり、1周ごとに変わっている雲の様子であったりと、自然のダイナミズムを感じさせてくれる。海の色一つとっても、淡い水色から藍色まで地球の表情はあまりに多様で、見飽きることがないんです。それが夜になると、今度は都市の強烈な灯りが印象的に見える。オーロラや稲妻以外の地表の光は、人類の科学技術力が生み出したものです。それを見ていると、あたかも我々人類がこの地球を支配しているんだという感じを受けるし、どれだけ莫大なエネルギーを消費しているかが分かる。もし宇宙人が地球を夜に見たら、人間が一定の科学技術を有しているとすぐに察知できるでしょう。そんなふうに地球の環境に大きな影響を与え続けながら生きていることに対しての責任を感じたんです」
若田がそのように感じたのは、そのとき自分の滞在していた宇宙船そのものが、地球に似せて作られたものであることを深く理解していたからだ。
「多くの宇宙飛行士が言うように、宇宙船は小さな地球です。水を電気分解して酸素を取り出して呼吸に用い、副産物の水素と呼吸で発生する二酸化炭素からメタンと水を生成する。汗や尿もリサイクルして飲み水として再利用する。このような再生型の生命維持・環境制御技術を我々は獲得してきました。いまISSでは捨てているメタンにも水素が含まれているので、それを取り出して再利用する技術も必要になってきます」
若田はこう語ると、NASAで仕事をしていた際に出会った宇宙飛行士ジョン・ヤングの次のような言葉を紹介した。
「バックアップの住みかのない生命体は必ず滅びる」
2018年1月5日に87歳で亡くなったジョン・ヤングは、6度の宇宙飛行を行なった「雲の上の人」だった。アポロ16号やスペースシャトルの初フライトのミッションでは船長を務め、月面にも降り立って3度の船外活動を行なっている。