そして、驚くべきことに、スウェーデンにはこのような施設が100か所以上ある。軍人だけではなく、一般市民も十分に避難可能な数だ。そのほかにも、町の中にある教会の地下が避難スペースになっていたりと、民間防衛が非常に整っている。兵器の危険性が高まるにつれ、各国でこのような設備も検討されるべきであろう。
永世中立国・スイスの軍備は
次に取り上げるのはスイスだ。スイスは永世中立国であり、しばしば平和な国の模範として取り上げられている。しかし一方で、その背景にあるのは非常に整備された軍備だ。そのため、周りの国がうかつに侵攻できないのである。
化学兵器や生物兵器に対する防衛体制も非常に素晴らしい。私はスイスで、生物兵器と化学兵器の両方を研究している施設を見学したことがある。ここではサリンをはじめ、いろいろな化学兵器を開発していた。なお、これはスイスが使用するためでなく、国連からの要請で製造している。どういうことかというと、化学兵器を用いた戦争やテロが起きた場合に、使われた兵器が何であるかを検出する時の基準として使うためである。イラン-イラク戦争でどういう毒ガスが使われたか判断したのもスイスであった。生物兵器の施設の方も大変立派だ。私が見学したときには施設のレベルはBSL-3と最高クラスではなかったが、いまではBSL-4の設備ができているようである。
このように、非常に防衛体制が整っているスイスは民間防衛も優秀だ。アルプスの山の中には数千の避難所があり、そこで長期間避難することができるようになっている。中には立派な医務室がついているものもあり、ここでは手術も可能である。
国民全員に防毒マスクを配るイスラエル
このように、スウェーデン・スイスは設備が非常に整備されているが、よりミクロな部分で対策が徹底されているのはイスラエルだ。ここの国民は、全員に防毒マスクが配られている。第一次湾岸戦争の時、イラクはイスラエルに対して、スカッドミサイルで攻撃を仕掛けた。ミサイルが発射されたという警告のサイレンが鳴ると、イスラエルの人々はすぐに防毒マスクを装着して、避難所に向かった。もし、弾頭にサリンのような神経ガスが入っていた場合は、着弾した時点で防毒マスクを着けても意味がないのである。