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 すごい結果に思えるかもしれませんが、私もこの研究だけで「コロナがある意味減っていく」「コロナに効くのではないか」と発言してしまった吉村知事は勇み足だったと思います。被験者が41人だけというのは、科学的結論を得るには少なすぎます。百人、千人単位の被験者を対象に、ポビドンヨード群、水うがい群、何もしない群等に分けて無作為に割り付けなければ、ポビドンヨードの本当の効果はわからないでしょう。

 それに、唾液ウイルスの陽性頻度が下がったことが、そのまま「コロナに効く」ことには直結しません。理屈はともあれ、ポビドンヨード群のほうが、水うがい群や、何もしない群に比べて、陽性率だけでなく、発症率、重症化率、死亡率などが低下するという結果を得られない限り、「ポビドンヨードがコロナに効く」とは言えないはずです。これは、薬を飲んで血圧が下がっただけでは、あまり意味がないのと同じです。高血圧の治療は、それによって起こる心血管病や脳卒中を防ぐことが目的だからです。

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あえて研究結果をポジティブに捉えてみた

 ただ私は、池に落ちた犬を寄ってたかって叩くようなことは、あまり好きではありません。吉村知事は権力者ですから、問題があれば批判されるのは当然です。しかし、今回の「勇み足」に対する叩き方に関しては、群集心理が行き過ぎで、むしろそちらのほうが怖いと感じました。そこで、天邪鬼な私は、あえて逆張りをして、今回の研究結果をポジティブに捉えてみようと思いました。

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 松山センター長もテレビで語っていましたが、今回の研究成果はポビドンヨードのうがいによって「自分がコロナにかかるのを防ぐ」ことよりも、「他の人にコロナをうつすリスクが減るかもしれない」というところに、意義を見るべきだと思います。

 松山センター長によると、新型コロナウイルスは、口の中でウイルスが増えるのが特徴だそうです。実際に、人が大声でしゃべったり歌ったりした時に唾液の飛沫が飛んで、それによって感染しやすいと言われています。だから、大きな声を出しがちな「接待を伴う飲食店やカラオケなどは控えて」と言われているわけですね。

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「他の人にうつすリスクを減らせる」……かもしれない

 ですが、もし本当に研究結果の通りポビドンヨードによってウイルスを大幅に減らせるのなら、お店の従業員やお客さんが事前に定期的なうがいをしておくことによって、誰かがコロナに感染していたとしても、その人から他の人にうつすリスクが減ることは十分考えられます。

 勘違いしないでください。だからといって、感染リスクを減らせることが「実証」されているわけではありません。ですから、現時点ではコロナ対策としてポビドンヨードのうがいを広く推奨することはできません。あくまで理論的には「そのような『仮説』が成り立ちますよね」という話です。