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菅義偉さん、日本学術会議に介入して面白がられる一部始終

2020/10/03

菅さん以上にのらりくらりしている加藤勝信さん

 そもそも、戦争の仕組みがいままでの兵隊と戦車のようなハード依存からどんどんソフト戦に移り、サイバー攻撃や無人機、宇宙にまで戦場が広がっていくところで「いかなる軍事技術の研究開発にも与しない」と言いながら、もともとは軍事技術であるインターネットを使わない研究団体はあるのかという話になります。

 理念として戦争を繰り返さない、戦争に加担しない決意を掲げることはとても大事なことですし、戦争なんて絶対に繰り返してはいけないのは当然としても、学術団体の名のもとに、別に研究者全員の総意が取れているわけでもない団体が研究者87万人の代表であると標榜して日本の安全保障政策に提言をするというのはどういう料簡なのか、見ている側としても悩ましいものがあります。

 一方で、菅義偉さんのご性格もあって、ある議論について是々非々で意見を取り入れ、意見と人格は別ということで一度批判した人たちも包容し広く議論を積み重ねるということはしない模様です。まあ確かに安保法制や防衛施設庁でのすったもんだで菅義偉さんは官房長官として真正面から問題収拾に当たったことを考えれば、批判していた人たちが総理の任命する日本学術会議の会員になるなんてとんでもない、と思ったんじゃないかと。

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 そこで、菅政権がこの問題について、どういう説明責任を果たすのか興味津々なのですが、新しく官房長官になった加藤勝信さんが菅さん以上にのらりくらりしていて、ひょっとして加藤さんは記者会見のあいだじゅう、実はバランスボールの上に座ってるんじゃないかと思うぐらいにゆらゆらしているのが印象的です。

加藤勝信官房長官 ©AFLO

そしてパンドラの箱を面白半分に全開にする菅義偉さん

 日本学術会議も科学者全員の意志決定を取り付ける代弁機関というわけでもありませんので、仮に菅さんにいじわるされて会員になれなくても、学問の自由が損なわれるようなことは別になさそうで、それが嫌なら「新日本学術会議」を立ち上げたり、大仁田厚を会長に招聘して「日本学術FMW」とか三沢光晴に泉下から帰ってきてもらってリアル路線を踏襲する「日本学術ノア」などを結成すると、我が国の学術団体も活性化の一途を辿り、爆発的な論文数の拡大が実現して国際的な大学ランキングもうなぎ上りになるのではないかと思わずにはいられません。

©文藝春秋

 日弁連にせよ日本学術会議にせよ、構成している人々の意見をどう集約しているのか分かりませんが、政策提言の名のもとにイデオロギー満載の政権批判や反対論を繰り返す節もあり、多事争論は良しとしつつも、もうちょっとやり方があるんじゃないかと思うんですよね。

 そして、こういうパンドラの箱を面白半分に全開にする菅義偉さんの硬骨っぷりもまた見事です。菅義偉さんが「どくさいスイッチ」でも手に入れたら躊躇なく全力で高橋名人ばりの連打をしかねない恐怖感を感じさせつつも、大学や研究室などにはびこる中華浸透に対する対抗も辞さずに張り切って政権運営をしていっていただければと願っています。

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