1ページ目から読む
12/15ページ目

──藤井先生は棋聖戦第1局で『打診の手筋』を応用したとおっしゃってましたよね。詰将棋の。

勝又七段:
 それも『将棋世界』で解説したんですけど、ちょっとやります?

──え! いいんですか!?

ADVERTISEMENT

勝又七段:
 ええとね。じゃあ『盤上のフロンティア』から──

──(10分間ほど集中講義を受ける)……いやぁ……すみません。これ、私の力じゃまとめられる気がしないんで、気になった方はぜひ『将棋世界』を読んでください……。

才能・努力・環境

──勝又先生は、藤井先生はなぜああも強くなったとお考えでしょう?

勝又七段:
 私は、彼の強さの理由は、才能・努力・環境の3つが揃ったからだと思います。

──才能・努力・環境……。

勝又七段:
 才能はもちろんすごい。そして彼は幼稚園の頃から詰将棋を解いて終盤力を鍛えた。この点でいうと、彼は詰将棋を将棋の終盤に活かす才能もあったということですよね。

──努力と才能が上手く噛み合ってるんですね。

勝又七段:
 で、まわりの環境も非常に良かったと。杉本八段の弟子になったこととかね。

──その中でいうと、戦法の進歩はどの要素に関わってくるでしょう? 今回のインタビューは、戦法の進歩と藤井先生の強さの関連を解き明かしたいと思っているのですが……。

勝又七段:
 今の将棋は、藤井二冠に向いてるわけですよ。自玉も危ない将棋を指さなければいけないわけですからね。双玉の詰将棋みたいな。

──努力と才能で磨き上げた詰将棋の能力が、より活かされやすい状況になっているわけですね。

勝又七段:
 サッカーでたとえると、守備がマンツーマンからゾーンディフェンスに変わって来てる。ゴールキーパーである玉が、11人目のフィールドプレーヤーとして、より積極的に受けに参加して……という感じに。

──気を抜けばゴールを許してしまいかねない危うさもあるわけですね。藤井先生ご自身が終盤力を磨いたというのに加え、戦法の進歩もその方向性にあった、ということなんでしょうか?