戦法とAIと藤井聡太
──藤井先生が強くなられたのは、AIを上手く活用して戦法の流行に乗ったとか、そういうのは関係なかったんでしょうか?
勝又七段:
……なかったと思いますね。関係なく強い人。中終盤がものすごく強いですし。どんな戦法使っても勝ちますし。AIのおかげで加速した、という意味はあると思いますけど。
──それは……「研究をAIでサポートしてるから」という意味か、それとも「AIの進歩によって戦法の流行が目まぐるしく変化するようになって、それに対応するのが上手いから」という意味なのか、どっちなんでしょう?
勝又七段:
うーん……僕の考えだと、藤井二冠は「AIと対話してる」んじゃないかと思ってて。自分と異なる考えの人から話を聞くのが、すごく勉強になると僕は考えてるんです。
──はい。
勝又七段:
だから僕が一番好きだった勉強法は、順位戦の控室に行ってみんなでワイワイすることで。
──桂の間でワイワイ。私も一度だけ『一番長い日(A級順位戦最終日)』の控室にお邪魔して、森下卓先生にお菓子をいただいたことがあります(笑)。
勝又七段:
私はね、年齢制限の26歳でプロになったんです。3月21日生まれなんで、本当にギリギリの三段リーグで上がれた。その時に一番勉強になったと思ったのが、順位戦の控室に行くこと。昔は羽生九段とか森内九段とかもいて。
──贅沢な空間ですね……。
勝又七段:
やっぱり自分一人で考えてると、独りよがりな思考になってしまう。そこで他人の意見を聞くことが非常に参考になった。それを藤井二冠は、AIとやってるんじゃないかな。
──ああ……なるほど。
勝又七段:
盲信するって意味じゃないですよ? やっぱり理解しないと意味がないし、あと何より、指しこなせないと意味ないですよね。
──AIと人類の違いは、やはり膨大な読みの力の差だと思うんです。そんなAIと同じように指すためには、読みの力が必要になると思うんですけど……それだけの力が藤井先生にはあると?