──そもそも……どうして、城を作ってたんですかね?
勝又七段:
そこは長い歴史があってね。急戦矢倉って、昔からあったんですよ。たとえば米長邦雄永世棋聖とか。昔からあった。でも……やっぱりちょっと無理かなぁ、って。
──野戦もあったけど、城を作る方が勝ってたと。
勝又七段:
急戦矢倉で、角を居たまま使うっていう発想も、昔からあったんです。それが、ほんのちょっとした違いで変わる……これも羽生九段の言葉で、「過去にあったこと。過去になかった組み合わせ」っていうようなことをおっしゃってるんですけど。
──部品はあったけど、それをどう組み合わせるかで変わってくると。その組み合わせというのをソフトが発見して……。
勝又七段:
ソフトが見つけて、人間もさらに改良したという感じですね。
──なるほどぉ……。
勝又七段:
実はね? 桂がポンポン跳ねてく将棋って、僕はずいぶん前にコンピュータ将棋で見てるんですよ。
──ええ!?
勝又七段
『激指』【※】とかも得意だったんです。昔からソフトはそうやりたがってた。だけど実力が付いてなかったから無理だったんです。先手が左の銀を7七に上がったらそれを咎めたいという発想は、昔からあったんです。
※激指……コンピュータ将棋ソフトウェアのシリーズ。
──強くなったから、その発想を実現できるようになったんですね。そう考えるとソフトも何だか、いじらしいですね(笑)
なぜ藤井聡太は角換わりを指していたのか?
──藤井先生はもともと矢倉党で、そこから角換わりにシフトされたじゃないですか。それはどうしてなんでしょう?
勝又七段:
まず、このグラフを見てください。これは角換わりの先手で、4八金・2九飛車と構えた形の対局数と勝率です。
──うわ! 2016年度に爆発的に増えてますね……先手勝率も6割以上でエグい……。
勝又七段:
この4八金・2九飛車という形がとにかく強いと。角換わりだけじゃなく、あらゆる戦型で大流行してます。大駒の打ち所が無いんです。飛車と金の弱点をお互いに補完し合うということですね。