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勝又七段:
 こういう急戦がどんどん先鋭化して……このあたりのことは『Number』でも書いたんですけど。

──じゃあこのインタビューは『Number』の補足記事としても楽しんでいただけるということですね(笑)

勝又七段:
 『Number』では、藤井二冠(王位・棋聖)と小林健二九段の将棋を取り上げて解説しました。伯父さんとの将棋です。

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──藤井先生の師匠である杉本昌隆先生の兄弟子に当たるのが小林先生ですね。順位戦A級4期在籍。棋戦優勝2回。堂々たる大棋士です。

勝又七段:
 後手の藤井二冠が14手目にいきなり6五桂と跳ねるんですが……後手は角も飛車も桂馬も全部使えるのに、先手は角も飛車も使えないうえに、7七に上がった銀が桂馬に狙われるだけの駒になっちゃってる。

 
 
 

──はい、はい。確かに。

勝又七段:
 しかも、先手は7七の銀が邪魔になって桂馬が跳ねられないじゃないですか。だから『Number』だと、現代将棋では桂馬がすぐ前線に出るけど、7七銀があるとそれができない、だから矢倉は衰退したと書きました。増田康宏六段の「矢倉は終わった」発言はセンセーショナルだったんですけど、彼はちゃんとその理由を「桂馬が使いづらいから」と言ってるんです。

──けど、こう中央に向かって桂馬をポンポン跳ねるのって、まるで私みたいな素人が指してる将棋のように見えてしまいますね……。

勝又七段:
 「桂馬の高跳び歩の餌食」ってね。私が奨励会を受験する頃にこんな将棋を指そうものなら師匠に怒られたと思います。

──格言が通用しなくなるくらい、将棋の常識が変わったんですね……。

勝又七段:
 昔のように、予定調和で矢倉に組み上げてから戦うんじゃ間に合わなくなった。城攻めから、野戦に持ち込まれちゃった感じですよね。昔の矢倉が豊臣秀吉だったら、今の矢倉は徳川家康の関ヶ原の戦いみたいな。

──なぁるほど! わかりやすいたとえです。

勝又七段:
 城を作る前にやられちゃったら、堪らないですからね。