──そういえば勝又先生は、藤井先生が居飛車穴熊を指されるとツイッターで反応しておられますよね。
勝又七段:
ええ。だから逆に、彼の居飛車穴熊はなかなかお目にかかれないのでね。あんまりやらないけど……彼の居飛車穴熊は一味も二味も三味も違うからねぇ。
──それだけ攻めにだけ集中できると、さぞすごい将棋になるんでしょうね!
勝又七段:
いや、そうではなくて……私が一番すごいと感動した穴熊は、佐藤康光九段の穴熊なんです。戦う穴熊みたいな感じでね。玉が自ら逃げ出したり。
──力強いですよねぇ。
勝又七段:
つまり、穴熊だけどきちんと一手勝ちを狙う。穴熊の固さを過信しないって意味で。
──穴熊にしても、自玉のこともちゃんと読んでるわけですね。楽をせずに。
勝又七段:
そうそう! ギリギリを読んでる。でも、藤井二冠の穴熊は、またそこから一味も二味も……。
──それめちゃ気になるんですけど。
勝又七段:
これは『将棋世界(2020年10月号)』に載せた将棋ですけど……。
──では、詳しい図面などはそちらでご確認いただくということで(笑)
勝又七段:
例の29連勝を止められた4日後の将棋なんですよ。藤井二冠対中田功八段。
──中田先生といえば、三間飛車の名手。居飛車穴熊に組ませて、それを攻略する職人肌の棋士ですね。
この将棋、穴熊とはいえ藤井先生の玉の上には1マス隙間があって、怖い感じですが……後手の攻めをどう凌ぐんでしょう?
勝又七段:
これ! 打ち歩詰め。
──ああー……そうか。自玉の安全度を読み切ってるんですね!
勝又七段:
読み切ってるの。この後も、ほら! また打ち歩詰め。また打ち歩詰め。また打ち歩詰め……。
──……超絶技巧ですね……いやもうちょっと意味がわからない……。
勝又七段:
私が反応するのもわかるでしょ?
──わかります……。
勝又七段:
すごいんですよ、この指し回しが。これがまだ中学3年生だったんですからねぇ。