文春オンライン

藤井聡太はなぜ矢倉でタイトルを取ったのか【勝又清和七段インタビュー 聞き手:白鳥士郎】

genre : ライフ, 娯楽

note

──自分の歩がありますもんね。

勝又七段:
 だから別の攻め方を考えましょう、と。

──サラッとおっしゃいましたけど……それって2五桂からの攻め方を全部捨てちゃうっていうことですよね? どうすればいいんでしょう?

ADVERTISEMENT

勝又七段:
 たとえば、藤井二冠が棋聖戦第1局で採用した脇システムだったり。第2局で渡辺明名人(棋王・王将)が採用した先手急戦矢倉だったり。それから土居矢倉。

──あの棋聖戦は、新しい矢倉の見本市だったんですね……!

なぜ藤井聡太は矢倉に戻ったのか?

──藤井先生、勝負所で矢倉を選ばれるようになりましたよね? 棋聖戦の前に指した王将戦の挑決とかでも。それはなぜなんでしょうか?

勝又七段:
 矢倉で勝てると思ってるからでしょうね。

──得意戦法は角換わりだったじゃないですか。それでいつ、矢倉で勝てると自信を深めることができたんでしょう?

勝又七段:
 でも、後手番は矢倉ですからね。彼は二手目に8四歩しか突かないから。二手目に8四歩を突く人間が矢倉を研究してなかったら、プロ棋士としてやってけませんから。

──後手で矢倉を受け続けてきて、どうやら先手で矢倉を使うのは有効だと思うようになった……。

勝又七段:
 と、いうことでしょうね。

──皆さん、藤井先生との対局にはとっておきの戦法を投入するでしょうしね。羽生先生みたいに相手の得意戦法を吸収して、どんどん強くなって……漫画みたいですね。

勝又七段:
 あと、今は先手の角換わりも勝率がそんなに高くないんですよ。棋聖戦第3局がいい例じゃないですか。

──藤井先生が先手で伝家の宝刀・角換わり腰掛け銀を抜いて決めに出ましたけど、渡辺先生の一人千日手みたいな待機策に敗れました。

勝又七段:
 藤井二冠の特徴は、序盤で守る手と攻める手があったら、攻める手を選ぶ傾向がある。受けが強いんですけど、初球のストライクから振ってくタイプ。

──確かに以前、藤井先生にインタビューさせていただいた時も「角換わりも、その頃(※奨励会三段になる前)のものは待機策という感じで、自分には合ってないなと感じてはいました」とおっしゃってました。角換わりがその頃みたいに待機策ばっかになったら、別の戦法に興味が移るのかもしれませんね。

関連記事