──いやー……。
勝又七段:
つまり、彼は穴熊にしても1つのゲームにしない。他の棋士は、穴熊にすることで指し手の精度を下げても大丈夫だと考える。次善手でも勝てると。でも藤井二冠は穴熊でも危険を顧みず最善手を追及する。そして詰将棋で培った終盤力で勝つ。
──まるで……まるで藤井先生は、双玉の詰将棋【※】を解いてるみたいですね……。
※双玉の詰将棋……受方の玉将だけでなく攻方の玉将も配置されている詰将棋。
勝又七段:
ああ、いい表現ですね! まさにそんな感じです。
──けど、普通は双玉の詰将棋なんて勉強すらしませんよねぇ……。
勝又七段:
詰む詰まないの部分を強化するのって、ソフトを使ったってどうしようもないじゃないですか。その場でコンピューターに聞けるんじゃないんだから。
──なるほど……。
勝又七段:
藤井二冠のどこが強いかっていったら、序盤中盤よりも明らかにこっち(終盤)でしょ。だからAIは関係ないと言ってるの。
──確かにそうですが……だとしたら藤井先生が新しいパソコンを組みたがっているのは、どういった理由からなんでしょうか?
勝又七段:
スパーリングパートナーとか、対話する相手としてAIは優秀ですからね。
──今のパートナーに飽きちゃったんですかね(笑)
藤井聡太は作れるのか?
──勝又先生はかつて、将棋連盟の子どもスクールを改革されたとうかがっています。
勝又七段:
ああ……若気の至りというやつでね(苦笑)。ちょっとの期間だけですけど。
──そのスクールから、新しい才能が次々と育っていった。それに勝又先生は、ご自身がお弟子を取らない代わりに、師匠である石田和雄先生に才能のある子たちを紹介なさって。
勝又七段:
門倉啓太五段、渡辺大夢五段、あとは高見泰地七段とかですか。
──かつて森下九段が、石田先生との対談で語っておられましたが……森下先生が「羽生善治は作れる」とおっしゃったら、勝又先生にそれを完全否定されたと。