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藤井聡太はなぜ矢倉でタイトルを取ったのか【勝又清和七段インタビュー 聞き手:白鳥士郎】

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note

勝又七段:
 はいはい。否定しました。

──それは、どういう理由で否定されたのでしょうか?

勝又七段:
 「若い頃にものすごく努力すれば強くなる」っていうのが持論の棋士は、けっこういるんです。でも自分が見ていた経験上、ものすごく努力しても強くなれなかった人も、たくさん見てるので。

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──ああ……なるほど。

勝又七段:
 強くなるどうこうの意見だと、私は渡辺名人の意見に近いですね。才能が絡んでくるという。

──同じだけの努力をしても、伸びる人と伸びない人がいる。

勝又七段:
 そう。それが才能の違い。

──多くの子どもたちをご覧になってきたなかで、勝又先生のおっしゃる『才能』とは、どんな部分のことなんでしょう?

勝又七段:
 絶対条件として、将棋が好きで好きで堪らないということです。でないとプロになってからやっていけない。ものすごく好きで好きで堪らないというんじゃないと。

──それはやはり、プロの世界では苦しいことも多いからと?

勝又七段:
 そうですね。苦しいことが出てくるから。好きじゃないと続かないから。イヤんなっちゃうから、やっぱり。

──そういう才能からすると、藤井先生はいかがでしょうか?

勝又七段:
 藤井二冠はぁ……桁違いですね。もうそれは。好きの度合いでいったら、門倉五段とか渡辺五段とか高見七段とか、三枚堂達也七段とか佐々木勇気七段とかも同じくらいですけどね。ただ藤井二冠は将棋が好きというのの他にも、詰将棋に関する能力とか、興味とか、それもすごいでしょ?

──むしろそちらが桁違いですよね。幼い頃からプロに混じって、その上を行くという……。

勝又七段:
 なかなか両方を兼ね備える人はいませんから。

──プロの先生でも、詰将棋を解かないとおっしゃってる方はいらっしゃいますもんね。実戦に出ないからと。

勝又七段:
 それは私もある意味、同意するんです。詰め手筋をきちんと知っておくべきであって、詰将棋のテクニックを実戦にそのまま使うということは、今まではなかった……はず、なん、ですけど……。

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