──ガッチリ囲った矢倉と比べると、右の金が離れちゃってる感じがしますし……何だかスカスカしてて怖いけど、優秀なんですねぇ。
勝又七段:
藤井二冠が自分なりにAIを取り入れて、このバランス型の現代将棋に移行しようとした時、それが一番フィットするのが角換わり腰掛け銀だったということですね。
──それで角換わりにシフトしたんですね!
勝又七段:
ちなみにこの4八金・2九飛車という形も、木村義雄十四世名人が編み出したものでした。
──木村先生って明治生まれですよ!? 昭和初期の名人が編み出した形が、令和になってあらゆる戦型で使われるようになるなんて……まさに「過去にあったこと。過去になかった組み合わせ」なわけですね!
勝又七段:
一方、矢倉は桂馬が主役の現代将棋から取り残されてしまった。飛車先を突かない矢倉はどんどん減っていって、勝率もひどいことになりました。
──先手でこの勝率じゃあ指されなくなりますよねぇ……。
勝又七段:
と、いうことなんですが。矢倉はまだ終わってないんです。
──え!?
勝又七段:
この形が出てきたんです。
──これはまた……
勝又七段:
で。実は矢倉、また復活してるんですね。
──おお! 4割だった勝率が、2019年度は5割3分近くまで! いったい何が起こってるんですか……?
矢倉は滅びぬ! 何度でも蘇るさ!
勝又七段:
「飛車先突かず矢倉」の話に戻りますけど、あれは飛車先を突かずに4六銀と3七桂を急いでたじゃないですか。
──はい。
勝又七段:
じゃあ今の矢倉はどうすると思いますか?
──飛車先を突くんですか?
勝又七段:
正解。
──おお~。
勝又七段:
簡単に言うと、2五歩を決めちゃいましょうと。そうして後手に3三に銀を上がってもらって。
──角道が止まりますね。
勝又七段:
そうして後手の急戦を阻止する。
──なるほど! これなら7七に銀を上がっておいても、後手の角が利いてないから。
勝又七段:
ただ一方で、先手も2五に桂馬を跳ねることができない。