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終わらない叡王戦“十番勝負”

第8局。感想戦は夜の帳につつまれて ©野澤亘伸

 その名人戦と並行して行われていたのが、第5期叡王戦“七番勝負”だ。4月12日に第1局が行われる予定だったが、新型コロナウイルスの感染拡大にともない、2カ月後の6月21日に開幕した。ところが、第1局では千日手指し直しとなり、続く第2局第3局はタイトル戦史上初となる2局連続での持将棋引き分けとなった。

 防衛側の永瀬拓矢叡王は、千日手や指し直しを厭わず、ストイックで粘り強い棋風から“軍曹”とも呼ばれる。

 この間、過密日程もあってか、挑戦者の豊島将之は公式戦での連敗を重ね、さらには名人を失冠してしまう。しかし、カド番で迎えた第8局を会心譜で勝利すると、フルセットとなった第9局を制してタイトルを奪取した。なお、シリーズ総手数1418手は史上最多。第9局の開催も史上初。千日手局も入れると「十番勝負」という異例の長期戦になったことから、ファンの間では「終わらない叡王戦」と話題になった。

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 なお、新叡王の就任後、叡王戦の主催は株式会社ドワンゴから株式会社不二家に交代することが発表された。新たに開幕した叡王戦の段位別予選では、対局者に不二家のお菓子が提供されている。