──へぇぇ~! 将棋の世界だと、AIの攻めがあまりにも鋭いので、受けばかりになって自分の将棋が壊れてしまう……という意見もありました。
大橋:
ネット碁を観察してみると、毎日毎日挑む棋士がいます。どの対局サイトでも、常駐してるAIがいるんですが、それと対戦する。
──自分のパソコンのソフトではなく、敢えて公開の場で打つわけですか?
大橋:
やっぱり向こう側にしっかり設定してくれたAIがいてくれるっていうのも、いい面があるんです。いろんな人に見られてるのも、いい影響があるのかもしれません。
──将棋の世界では最近、YouTuberになる棋士が増えていますが、見られている中で将棋ウォーズなんかをやって成績を上げている人もいます。
大橋:
やっぱり棋士は、見られてる碁をいっぱい打ったほうが強くなってる気がしますね!
──しかし……ほぼ、負けるわけですよね? 衆人環視の中で、プロがAIに負ける。怖くないんでしょうか?
大橋:
勝ち負けはどっちでもいい。何か得るものが一つでもあれば……そんな気持ちで対戦していますね。9割方、負けるんです。でもたまに勝つことがあって、それでファンが付くこともあるみたいです。
──たまに勝つ場合というのは、どんな打ち方をしているんでしょうか? アンチコンピューター戦略というのが将棋の世界ではかつてありましたが……つまり、AIの穴を突く。
大橋:
僕も昔、コンピューターの穴を突くようなこと、やったことがあります。でもAIと打つ人は、強くなりたいっていう気持ちが強い人です。アンチコンピューターでやっても、その形だけのハメ手なので他に応用できません。なので普通に戦います。
──その場合、どうやって勝つことが多いんでしょう?
大橋:
AIは攻め合いが苦手なので、中盤で殴り合いになれば少しチャンスがあります。あとアンチコンピューター戦略というわけではないですが、難解定石を挑んでAIにたまたま読み抜けがあって勝つ場合もあります。すると向こうもバージョンを変えてきたりして……。