──そうなんですか!?
大橋:
まだ進歩の過渡期……というか、ほんの初期だと思うんです。
まだまだぜんぜん強くなると思います。あ、そうそう。ゼロタイプって、半目差で勝つのが得意なんです。
──つまり、ギリギリ勝つように作られてる?
大橋:
ええ。でもゴラクシーは、そうやってギリギリ勝つよりも、最大差を目指して勝つほうが強くなるという考えのようで。極端に言えば、アルファ碁ゼロタイプは『100回対局したら100局とも半目勝ち』を目指しますが、ゴラクシーは『この1局を100目差で勝つ!』みたいな感じなんです。
──ものすごく極端な変化!
大橋:
囲碁AIは星と小目でいつも迷ってるんですが、ゼロタイプは星が好きなんです。星は昔から『バランスの一手』と人間のあいだでも言われていて。
しかし最近の、目数のパラメーターを持つゴラクシーやカタゴは、小目を選ぶのがどんどん増えているんです。小目を打つと戦闘的な囲碁になるんです。
──目数のパラメーターを加えたことで終盤に自信を持ったから、戦闘的になった……ということなんでしょうか。
大橋:
因果関係は証明できませんが……開発者の方にそれを言うと「偶然でしょう、そういう物語を見つける人間の思考が興味深いです」と言われたこともあります(笑)。
アルファ碁の影響で、人間界でも星に打ってダイレクト三々に入るという手が流行ったんですけど、今は星が減って小目が増えてきたという状況です。
2年くらい前に、海外の棋士が『小目は終わった』と言ったそうなんですが――。
──あれ!? どこかで聞いたことがありますよ!?
大橋:
日本の囲碁棋士は、増田康宏さんのような過激な棋士はいないんですけど(笑)。ただ今後はまた『星は終わったか』と言われるかもしれません。
──ははは!
大橋:
こんな感じで、どんどん循環しながら、少しずつ変わっていくんだと思います。
──ディープラーニングの登場で囲碁は大きく変わったというイメージがありましたけど、長い目で見るとそれほど変わっていない……というか、本当にまだまだ囲碁のほんのちょびっとしか解明できていないんですね。