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──目数の計算ができるということは、つまりディープラーニングの弱点とされていた終盤力が強化されているということでしょうか?

大橋:
 はい。もともとディープラーニングが得意なのは画像認識。囲碁をドット絵のように認識してその局面が勝ちか負けかを直感的に認識していた。目数も出すためには深い探索が必要で、学習時からそれをやるには、技術的に難しかったんです。でも、上手くやればそっちのほうが強くなることがわかってきて。

 それもやはり、人間の思考をトレース……とまで言えるかはわかりませんが、人間型のAIを作るということを目指す。そういう方向性です。

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──では……アルファ碁が出てきてパーセンテージで評価値を考えるようになった若手たちが、今はまた目数で考えるようになってるということですか?

大橋:
 そこは難しいところで……カタゴやゴラクシーは、パーセンテージと目数の両方のパラメーターを合体させて、形勢判断をしているんです。

 しかし目数の表示が細かすぎて、第一候補と第二候補の差が0.1目くらいしか違わないんですよ。

──1目とかじゃなくて、小数点以下の差なんですね!

大橋:
 さらに第一候補から第十候補までで目数差が1目くらいなことって、よくあって。

──うわぁ……それは、どれを選んでいいのかわからないですね……。

大橋:
 具体的に言うと……僕の場合だと、序盤はパーセンテージで捉えます。終盤に行くほど目数になっていくという感じでしょうか。

 序盤で1目しか違わない第一候補から第七候補くらいまでの差を捉えるのって、人間には難しくてですね(笑)。

 でもパーセンテージだと7%くらい違うかもしれない。49%と56%だったら、けっこう違いますよね?

──コンピューターがパーセンテージや目数といった明確な数字で形勢を教えてくれることで、人間の学習効率は上がったのでしょうか?

大橋:
 やはり目数があったほうが、かなり学習効率は上がるのではないかと思います。AIが70%と示していたとして、10目勝ってる70%と、1目差だけど70%だというのは、自分の頭で考えないとぜんぜんわからなかった部分なので。