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大橋:
 はい。『ここ青いね』と。海外の棋士も『ブルーポイント』と言うらしいんです。『ディスイズ・ブルーポイント!』(いい発音)って!

──囲碁の用語って、けっこう殺伐としてたじゃないですか。切るとか殺すとか。でもAIが入ってきたことで、そういう言葉の感性すらも変わっていくというのは……文章を扱う人間としても非常に興味深いです。

パーセンテージと目数

──ところで、囲碁AIは形勢をパーセンテージで表示するんですか? 将棋AIは点数ですけど……。

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大橋:
 囲碁は黒の勝率55%というようにパーセンテージですね。でも、そこも最近、変わってきている部分なんです。パーセンテージに目数のパラメーターを加えたのがゴラクシーで。すごく上手く組み合わせて強くなっているんですね。

──2つのパラメーターを組み合わせるんですか!

大橋:
 そうです。囲碁は地を多く取ったほうが勝ちのゲームです。今までのAIでは黒勝率90%と言っても、50目勝ちなのか1目勝ちなのかわかりませんでした

 勝率90%で1目勝ちの場合、小さなミスひとつで簡単に逆転されます。AIはミスをほとんどしませんから勝率90%ですが、人間はけっこうミスをしますから、その場合、全然90%ではないですね。ゴラクシーでは黒の勝率90%で1目勝ちなどというように、より人間の思考に近い形で評価してくれるのです。

 ちなみに、もう一つ、『カタゴ(KataGo)』というAIが登場してて。これはフリーのオープンソースで、いろいろな開発者が改造しているので、将棋ソフトで言うところの『やねうら王』みたいな感じのものです。

 オープンソースだと、去年までは『リーラゼロ(Leela Zero)』が一番人気だったんですけど、今はカタゴがリーラを超えて人気になってるんです。このカタゴがやはり目数を示すAIなんですね。

──何目勝ってますよ、みたいに示してくれるんですか?

大橋:
 そうですそうです。最近のトレンドはゴラクシーとカタゴで、オープンソースの中ではカタゴがどんどん上がってきてるという感じです。