1ページ目から読む
11/30ページ目

──絶芸の打つ碁は、すごく独特だったりするんでしょうか?

大橋:
 いやいや。もう人類とAIは、布石(序盤の打ちかた)に関しては似通った碁を打ちます。というか人間がAIに歩み寄ったので。ただ中盤以降はAIが強すぎて、理解できないことが多いんですが。

──そこは将棋界とも似た状況なんですね。あの、ディープラーニング系の将棋AIは、終盤に少し難があるのではと言われているんですが……。

ADVERTISEMENT

大橋:
 そこなんですよ! ディープラーニングでは人間でいう直感を鍛えているので、序盤がすごく強いんですけど、囲碁でも探索が大事な中終盤は比較的に苦手で。しかしさっきのゴラクシーなんですが、様々なドメイン知識を組み合わせて、中盤以降がほかのAIよりかなり強いんです。

──ディープラーニングなのに中終盤が強いとは……無敵じゃないですか!

大橋:
 一口にディープラーニングと言ってもいろいろありまして、ゴラクシーはそこを克服することで、ほかのAIを寄せ付けない強さを得ました。

 アルファ碁ゼロ系の、完全に自己対戦から学ぶだけのAIよりも、人間のドメイン知識を組み合わせて学習をさせてやったほうが、囲碁の専門AIとしては強い……という感じですね。

──すみません! ドメイン知識というのは……。

大橋:
 なんと言えばいいのか……ルールじゃないけど、人間が囲碁を打つ上で考えていることですね。あと何手でその石が取られるかとか、より具体的に言うと、シチョウとか。

──どんどん打っていくと盤の隅まで行って、石を全部とられちゃうやつですよね?

大橋:
 ゼロタイプのAIはシチョウがすごく苦手です。あと、2眼で生きるとか……そういうのもアルファ碁ゼロは教えてないんです。

シチョウ。

──その陣地に目が2つできれば絶対に取られないっていう、囲碁の本当に基礎的なことですよね?

大橋:
 それすら自己対戦から自分で学んでね、っていうのがゼロタイプなんです。ただそれは、ものすごい学習コストが必要になります。だからそのへんはあらかじめ組み込んであげるわけです。