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大橋:
 目新しいのは、その星に対して三々に入るということだけで。たとえばカカリと呼ばれるアプローチも人間と同じなんです。その後の打ち方は多少、人間とは違うんですが……それを違うと捉えるか似てると捉えるかは、棋士の感性次第かなと。

カカリ。
 

──専門用語がたくさん出てきて大変ですが……要するに、敵に接近していく。

大橋:
 数年前、星に対して三々に入るAIの手を見たときに、今の50代60代くらいのある棋士が『いやぁ……みっともなくてこれは打てない!』と言ったんですが、同じ日に、新人王を取ったばかりの広瀬優一君(五段)が『いやぁ……三々に入るの感動したんですよ!』と言っていて(笑)。

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 つい最近では、とある先輩棋士がお酒を飲んでうめくように「三々に入る棋士には負けたくない」と言ったという伝説を聞きました。一方で18歳のときに阿含桐山杯で優勝した六浦雄太君(七段)は、『AIもみんな星と小目に打つ、そこに辿りついていた人間て凄くないですか!?』と言ってました。

──ベテランと若手でそこまで反応が違うんですか!?

大橋:
 羽生先生のインタビュー記事でも、美意識に言及したものをたくさん読ませて頂きました。興味深いことに、今の若手棋士は、AIの打つ手を美しいと感じている気がします。その目で50年前のプロ棋士が打つ碁を見ると、違和感をおぼえるんじゃないでしょうか。逆に猛烈に感動する人もいるかも……。

 だから美意識も、学習するものによって変わってくる……そもそも人間の美意識って何なんだろう? って。

──大橋先生の過去のインタビューで、若手棋士達がAIを使った検討中に『これは青だよね』とか『蕁麻疹だ』と言ったりというのがありましたが……。

大橋:
 そうそう!

──AIは最善手の場所を青く光らせるので、最善手を『青い』と言う。逆に最善手を絞り込めずに全幅探索に入ると、盤のあらゆる部分が光るので、それを指して『蕁麻疹』と言う。このようにAIの影響で囲碁の用語すら変わってきた、ということですよね?