──世界への広がりが、囲碁にはあって将棋にはないものかなと思います。特に中国はAI技術の進歩も相当なものですが、中国の囲碁棋士も同じように急成長しているのでしょうか?
大橋:
中国と韓国はすごいですね。トップ棋士がAIを吸収する早さに関しては、中韓のトップはすごく早かったなと。もともと強い人のほうが吸収しやすいという面もあると思うんですけど……。
──やはりその二国では、囲碁人気は相当なものなのでしょうか?
大橋:
韓国は今、少し下火になってきている面があると思いますが、中国はすごいですね。囲碁教室をやると、一つの教室で生徒が数千人いるとか。全部合わせると数百万人とか。
──ええ!? そんなに……?
大橋:
僕も一昨年、囲碁AIの大会のために中国に行ったんです。そのAIの大会は、大きな囲碁大会の一部として行われたんですが……そっちは一週間ぶっ続けで囲碁を打ち続けるみたいな。巨大な体育館のような会場が3つくらい満席。パネル展示スペースもあってのべ10万人くらい動員しているんじゃないかと。
──コミケみたいですね!
大橋:
プロの人数までは把握していないんですけど……中国は、プロになるのはそんなに難しくないんですよ。そこから国家チームに入るのが大変で……。
僕たちが棋譜をよく見ているのは、国家チームのトップの人たちのものです。中国には野球やサッカーみたいに、北京や上海や杭州などにそれぞれプロがいて、それぞれの地域から代表を出して団体リーグ戦をやるんです。そのトップは甲級リーグと呼ばれていて。
──ほうほう……下位リーグには乙級と丙級もあるんですね。甲級から乙級に落ちたりと、サッカーのJリーグとほぼ同じようなシステムなのか……これは確かに人気が出そうです!
大橋:
競争は激しくて、トップはものすごく稼ぎますけど……リーグの選手に入るのが大変で。リーグに入れないと、アマチュアに戻って大学に入って囲碁の先生になったり、まったく違う道に進んだりもします。