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「有観客での落語会は不可能」という事実

 文藝春秋では2020年1月から社内スペースを使って月1回の「文春落語」をスタート。1月の春風亭一之輔独演会、2月の柳家三三独演会は予定どおり実施されたものの、3月の三遊亭兼好独演会、4月の桃月庵白酒独演会はコロナ禍で中止。4月末には緊急事態宣言の延長も決まり、5月の開催も危ぶまれていた。そんな中で出てきたアイディアが、週刊文春で連載を持つ柳家喬太郎による「文春落語オンライン」。無観客による有料配信の落語会で、第1回は5月2日に行なわれた柳家喬太郎独演会。僕も視聴券を購入して『井戸の茶碗』『夜の慣用句』の2席を観た。ここで「文春落語」はリアルな落語会から無観客配信に舵を切ることになる。

「文春落語オンライン」が始まった5月の連休を境に、様々な配信落語会が催されるようになった。緊急事態宣言が5月末まで延長されたことで、主催者も落語家も「有観客での落語会は不可能」という事実に正面から向き合う必要が生じたからだろう。コロナ以前は毎日興行を行なってきた新宿の「道楽亭」が5月9日から有料配信の「道楽亭ネット寄席」を開始。4月は全公演が中止になった「渋谷らくご」(シブラク)も5月は有料配信で実施された。

 こうした主催者側の取り組みだけでなく、自主的な配信に挑戦する落語家も増えたため、僕も俄然「毎日配信落語を観るので忙しい」という状態になった。僕が5月に観た配信落語会はなんと39公演。落語は117席観ている。コロナ禍前の日常と比べても、まったく遜色がない。

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代官山落語オンライン夜咄

 僕自身も配信落語会を始めた。代官山のライヴハウス「晴れたら空に豆まいて」で僕がプロデュースする「代官山落語夜咄」は、5月27日に無観客有料配信の「代官山落語オンライン夜咄」として実施され、三遊亭白鳥が『メルヘンもう半分』を熱演。これ以降、代官山での僕の会はすべて「オンライン夜咄」となった。