“定数半減&有料配信”のハイブリッド公演という形も
5月25日に緊急事態宣言が解除されると、リアルな落語会は“マスク着用/換気/消毒/体温測定”を徹底し“ソーシャルディスタンス対応(演者と客席の距離の確保/定員半数以下)”の条件のもとに開催が可能になったが、まだ有観客を控える主催者もあり、上野鈴本演芸場は6月末まで休演する代わりに中止となった15公演を昼夜に分けて無観客で行ない、YouTube内の「鈴本演芸場チャンネル」で土日に無料生配信。イイノホールで柳家三三が行なう「月例三三独演」は4月・5月は中止したが、6月から有料で視聴券を販売して配信する「月例三三独演配信公演」に移行した。読売新聞社が本社内のよみうり大手町ホールで年数回開催してきた「よみらくご」も、6月4日には無観客配信で実施されている。
興行において“定員半数以下”とは、チケット代が同じなら収益が半分以下になることを意味している。会場を借りての興行は、ギャラをまともに払いながらチケット代を上げなければ赤字になる。そこで6月から盛んになったのが“定数半減&有料配信”のハイブリッド公演だ。それを積極的に推し進めたのが産経新聞社で、6月15日の柳亭こみち独演会を皮切りに、7月7日には三遊亭兼好独演会、7月9日には桂宮治独演会と国立演芸場でのハイブリッド公演を3回続けた後、7月19日の「大手町落語会」、7月29日の「三三・一之輔二人会」と日経ホール公演へと続いた。以降産経新聞社はこの方式で落語会を開催し続けている。
9月には施設利用に関するガイドラインが緩和されて“定員半数以下”の縛りはなくなったが、現実にはコロナ禍は終息するどころか感染拡大傾向にあり、観客の不安を取り除くために定員の半数もしくはそれに準ずる形で開催される落語会がほとんどで、毎年12月に僕が恵比寿ガーデンホールで行なう「恵比寿ルルティモ寄席」も、昨年は会場での観客数を減らしつつ有料配信を行なう、という措置を取った。自分の会をハイブリッド方式で行なう落語家もいれば無観客配信を続ける落語家もいて、リアルな会の主催者は“定員半減”を前提に「配信するか、それ以外の何らかの措置で補填するか」の判断を迫られる、というのが昨年9月から年末までの状況だった。
年が明けると感染拡大で緊急事態宣言が発出され、今度は“午後8時までの終演”を求められたことで、再び“中止/延期”が増えた。緊急事態宣言解除後の蔓延防止等重点措置でも興行に対する“要請”は変わっていない。そして遂に3度目の緊急事態宣言が発出された。そんな流れの中、僕自身の「毎日落語を観る」日常の中で“配信”は欠かせないものとなっている。