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「殺すほうが大事です。そっちのほうが、興奮するから」殺人に快楽を覚える“反社会性パーソナリティ障害”

2021/06/18
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反社会性パーソナリティ障害とは

 パーソナリティ障害は、人格が正常から大きく偏っているために、本人や周囲に個人的、社会的な苦痛をもたらす障害です。その中でも、特に犯罪との関わりが深いのが、反社会性パーソナリティ障害です。

 その特徴は、「法を破る」「人を騙す」「衝動性や攻撃性」「無責任で向こう見ず」「冷淡で、他人を傷つけることに無関心」「罪悪感がない」などで、以前は精神病質(英語ではサイコパス)と呼ばれました。

 岡庭容疑者も、報道による情報を総合すると、反社会性パーソナリティ障害の症状を示している可能性が高いとみられます。

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 過去のケースで岡庭容疑者に近いのは、1997年の神戸連続児童殺傷事件を起こした少年Aでしょう。14歳の少年Aは、まず路上で小学生の女児2人をハンマーで殴り、一人に重傷を負わせ、その1カ月後、再び小学生女児を金槌で殴って死亡させ、同じ日に別の小学生女児を小刀で刺して重傷を負わせています。さらに2カ月後、小学6年生の男児を絞殺、その後、首を切断しました。

 殺人に至るほどの反社会性パーソナリティ障害の持ち主は、欧米に比べると、日本ではあまり見られません。日本で起こる大量殺人では、先ほど挙げた元心理分析官レスラーの分類で言えば、無秩序型で、一時の激情に駆られて一度に複数の人を殺害した後、すぐに捕まるパターンがほとんどです。秩序型の連続殺人はまれです。

 その理由ははっきりしませんが、日本の家屋が狭いことが、一つの要因と考えられます。殺人を快楽とし、何年にもわたって凶行をくり返す欧米の連続殺人犯の多くは、自宅に遺体の一部を一種の「記念品」としてコレクションします。こうした行為はある程度広い家でなければ不可能で、日本の家屋で遺体を隠し続けるのは困難です。こうした住宅環境の違いが、日本では抑止力になっている可能性があります。

「動物殺し」は危険な兆候

 数は少ないとしても、反社会性パーソナリティ障害を示す人が、一定の確率で出現するのは間違いありません。問題は、いかにして殺人を防ぐかです。

 そのためにはまずいち早く危険な兆候をつかまなければなりません。目安の一つは動物殺しです。思春期における性の目覚めと動物殺しが作用し、性的サディズムが殺人へ発展することがあります。少年Aは小5から、岡庭容疑者も中学校に入った頃から小動物を殺し、さらに両者とも何匹も猫を殺しています。

茨城一家殺傷事件、少年A……『人を殺したい人たち』」の全文は、「文藝春秋」2021年7月号と「文藝春秋 電子版」に掲載されています。

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人を殺したい人たち
「殺すほうが大事です。そっちのほうが、興奮するから」殺人に快楽を覚える“反社会性パーソナリティ障害”

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