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『姫君を喰う話』で再び脚光を浴びた“伝説の作家”宇能鴻一郎87歳の告白「ポルノ小説は最も詩に近い純粋なもの」

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 家内とは、東大のダンスパーティーで知り合いました。当時、男女の出会いはそのくらいしかなかった。芥川賞の授賞パーティーには教授と助教授を招いて、親族は妹だけでしたけど、友人も呼んで、結婚披露宴を勝手に兼ねました。好き勝手やらせていただいた文春には感謝していますよ(笑)。

 その後は編集者の要望に応じるまま、自然に書いていたらこうなりました。書き手の一方的な思いだけで書いても面白くないし、純文学だと言われても、何が純文学なのか僕にはよくわかりません。

 元々、暴力的な小説が好きです。ところがバイオレンスには大藪春彦さんなどの書き手がいましたし、編集者は売れる本を作りたい気持ちが強いから、ポルノを書くよう言ってきたのでしょう。

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ポルノというのはとても純粋

 しかしポルノというのはとても純粋だから、純文学に近いところがあります。たとえば、推理小説は荒唐無稽です。いわゆるミステリー作家の書くミステリーって、インチキでしょ? 自分で火をつけて自分で消すような、不自然な話が多い。

写真はイメージです ©iStock.com

 僕もミステリーを書きましたけど、後半に少しその要素が入っているだけで、ほとんど旅行記のようなものでした。ミステリーには、大衆に受けるための正義感が必要です。僕は正義感というものをまったく信用していませんから、ミステリーらしく書けない。

 正義感で言うと、60年安保のときはデモに行こうと誘われたり、作家仲間からベ平連に入れと誘われたりしましたけど、断り続けました。

宇能鴻一郎氏による「芥川賞・ポルノ・死」の全文は、「文藝春秋」2022年3月号と「文藝春秋 電子版」に掲載されています。

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芥川賞・ポルノ・死
『姫君を喰う話』で再び脚光を浴びた“伝説の作家”宇能鴻一郎87歳の告白「ポルノ小説は最も詩に近い純粋なもの」

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