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「理解できない非合理」が生まれてしまった

山添 私もずっとロシアを見てきたので、非合理といいますか、悪い人が悪いことをして勝ってしまうという世界は、割と見てきたんですね。でも今回は、勝つつもりがあるかもわからないところに大きな力が動いているというのが一番の非合理で……ショックですね。

 2月24日にプーチンが行った開戦の演説も、ひたすら悪口と嘘ばかりが並べたてられたもので、とても聞いていられないものでした。テレビの前で、あれを1時間も聞ける人はいないでしょう。あのようなことをする人が、合理的だとは私には思えなかったです。

 巨大な非合理、我々の理解できない非合理が国連常任理事国から生まれて、それを実現しようとしている。それがすごいショックですね。開戦の理由づけも雑ですし、以前のプーチンであればもう少し、人がついてこれる理由づけをやっていたんですけど……変わりましたね。ショックです。

これは他人事ではない

――日本に住む私たちが、今知っておかなければいけないことは何でしょうか。

山添 ロシアの嘘が無数にあるということもそうですが、私は「情報空間工作」というものも研究をしています。アメリカのトランプ政権が生まれた時や、フランスのマクロン政権が生まれたときにも、ロシアが情報空間工作をやっていたということについて研究を重ねてきました。

 そこで、社会の脆弱性や分断というのは、誰かに利用されてしまうという危機認識を持ちました。こうした問題意識は、今後、日本社会でも必要だと思っていましたので、それをお伝えしたいです。

ウクライナのゼレンスキー大統領 ©AFLO

 これは他人事ではないのです。これを他人事のように見て、ロシアの肩を持つような言説を広げるのは危ないです。中でも一番危険なのは、「ウクライナは早く降伏するべき」といった言説です。ロシアにも理由はあるんだし、ロシアに逆らっても仕方ない、キエフはどうせ落ちるんだから、といったような、早期降伏論が日本で有力になってしまうと、それは日本自身の次の危機に利用されます。

 現在の危機に、何が社会の言説にとって必要なのかを、ウクライナの立場で考えることが、日本社会を守るためにも必要だと私は思っています。

取材・構成=近藤奈香

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