字が綺麗な木澤尚文の成長
最初そこにいたのは木澤でした。昨年は制球難もあって、1軍登板なしだった20年のドラフト1位。大学時代からしのぎを削った楽天・早川隆久投手や、同学年のDeNA・牧秀悟選手、阪神・佐藤輝明選手ら「ドラ1組」が1年目から活躍したため、焦りや、悔しい思いもあったでしょう。今年は開幕カードで1軍初登板を果たすと、そこから10試合連続で自責点0、防御率0.00という数字がスコアボードに輝いていました。ここまで20試合に登板し3勝1敗、防御率1.88と素晴らしい成績を残しています。
最速156km、雄叫びを上げ、毎度気合の入ったピッチングスタイルですが、彼はとても礼儀正しく真面目な男です。公式アプリ「深堀・ザ・スワローズ~選手の横顔アンケート」収録のため、事前に書いてもらった50のアンケートでも生真面目に、しかもとても綺麗な字で埋めてくれたのは印象的でした。ブルペンの先輩・清水も字が綺麗だけど、それに匹敵するほどの美しい字。僕と違って、幼少の頃からエリートの道を歩んできたことが偲ばれます。違う意味のエリート、村上宗隆が「趣味:サイクリング」とまったくやらないことを堂々と書いてくるのも頼もしいんですけどね。
インタビューでは空回りする関西人・大西広樹
そしてもうひとりが3年目の大西広樹。去年は33試合に登板し、プロ入り初勝利をあげ、結果3勝。今年は、交流戦前は負けが決まった場面や、投手運用の関係上、厳しい場面での登板がままありましたが、すでに3勝(1敗)。20試合登板で防御率も2.16と昨年より0.7も改善しています。与えられた任務を淡々とこなしている印象の彼ですが、素顔も真面目。インタビューを撮りに行くと、なんとか面白いことを言おうとするも空回りするタイプ。関西人の血がそうさせるのか、あがきにあがいて最後は顔芸でシメるという妙技を編み出しています。「大西くん、顔芸じゃない、トークだよ!」と指摘しても顔芸に一層磨きをかける頑なな男です。
摑んだチャンスを離さない、愛弟子・山崎晃大朗のスゴさ
同様に打者で名前を上げるとすれば、愛弟子・山崎晃大朗。ここまで代走・守備固めという起用が多かったけど、5月8日の巨人戦で途中出場し、難攻不落だった大勢投手から逆転2点タイムリー。交流戦の2戦目、5月25日の日本ハム戦では2番・右翼で先発出場すると4-6で迎えた9回裏逆転サヨナラ3ラン、6月8日のオリックス戦では1-3で迎えた5回表に同点2点タイムリーを放つなど、大きな仕事をやってのけています。摑んだスタメンのチャンスを逃さない活躍。
僕も控えだったのでわかりますが、サブの選手にとって「チャンスは1回」なんです。そこで失敗してしまえば取り返す場面は少ない。そのためには練習しかないんだ、という気概を感じさせてくれる選手です。お立ち台では相変わらずのスベリ具合で、傍で見ていて胸が苦しくなりますが、ぜひお立ち台でのチャンスを増やしてトークでは「取り返して」ほしいと思います。
18コ上の先輩をイジりにくる“強心臓”長岡秀樹
最後に、ここまで全試合でスタメンショートと僕の期待を大きく超える活躍をしている3年目の長岡秀樹。昨年は一軍出場5試合で無安打、それが今年は開幕6番・遊撃に抜擢された男。4月に遠征に帯同した松山で彼の守備をみて驚きました。
「あの長岡が!?」と思わず声に出したほど、フィールディングが去年より遥かに上達しているのです。バットコントロールはもとから良いのですが、確実性も身につけてきました。
しかも、一緒にプレーした仲でもない先輩に気さくに話しかけられるナイスガイ。去年のファン感謝デーでもカメラを持ってなぜか僕を連写してきました。18コ下の後輩にわかりやすくイジられるというのは、野球界広しと言えども僕くらいではないかと思わせるほどの「いじり上手」です。
ここにあげた彼らは今「替えのきく選手」から村上宗隆、山田哲人クラスの「替えのきかない選手」へと実力で上り詰めようとしています。依然、主力を欠くなか、そんな選手がひしめくチームの将来が明るくないわけありません。
そうそう、高校駅伝の名門校でもある八千代松陰高出身の長岡とは、いつか駅伝の話ができたらいいなぁと思っています。何を隠そう駅伝マニアの僕。彼の在学中には今年の箱根駅伝でも活躍した、すごい選手がひしめいているんですよね! 次の長岡のYouTubeインタビューのテーマは「大学三大駅伝展望」にしようかな。みなさん、いかがでしょう?
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