「ポスター貼りの対価」として労務費を受け取っていたが、実態は…?
5200円の労務費を受け取った森脇勇人・松江市議が証言する。
「細田先生が地元に来る時は、街宣カーに一緒に乗って『先生にお世話になってあの橋ができました』などと説明する。県議が付いてこないといかんのだけど、来ないから自分一人で。街頭演説で前説したり」
――マイクを持って?
「そうそう」
――労務費の名目は?
「それはポスター貼り。一枚200円」
――公示日に貼る?
「当たり前だがね。選挙運動費ね」
公示日の様子を報じた山陰中央新報のデジタル版などには、森脇市議らが細田氏の遊説に拍手を送る写真が掲載されている。
「週刊文春」が、細田氏から労務費の支払いを受けた現職の地方議員11名に取材したところ、全員が、細田陣営の選挙カーに同乗して地元を案内したり、有権者に投票を呼びかけるなどの選挙運動を行ったことを認めた。また、労務費の名目については全員が「ポスター貼りの対価」と答えた。
公職選挙法では、ポスター貼りの対価を労務費として支払うことは認められている。「選挙運動はボランティア」が大原則だが、ポスター貼りなどの行為は「機械的な単純作業」と考えられているためだ。
だが、政治資金や選挙などに詳しい岩井奉信・日大名誉教授はこう指摘する。
「証言を聞く限り、地方議員たちは選挙運動員の性格が強い。彼らにとってポスター貼りは、選挙運動の“付属的行為”に過ぎません。にもかかわらず、その“付属的行為”の部分だけを切り取って、費用を払うのは、明らかにおかしい。公職選挙法違反の運動員買収と指摘されても仕方がありません」
実際、東京高等裁判所で次のような判例も出ている。
〈本来無報酬であるべき選挙運動に従事する者がたまたまあわせて単なる事務または労務をも行つたからといつて、それは選挙運動に付随し当然これに含まれるものとみるべきであり、(略)これに対して報酬を支給することはできない〉(1972年3月27日付)