「日本でライフル協会に入ってみると、みんなずいぶん高い鉄砲を買わされているな、と(笑)。『それ、アメリカで買ったらその3分の1の値段だぞ』と言ったら、『じゃあ、取り寄せてくれよ』というところから始まって、そのうちに部品を輸入して、自分で旋盤回して銃を作るようになりました」
いつしかその評判を聞きつけたハンターからオーダーメイドの銃製作を依頼されるようになり、今では年間10挺ほどを手掛けている。
狙う獲物はシカかヒグマか…
その山崎は、銃について意外なことを言った。
「これは誤解している人も多いのですが、ハンターが使う銃の性能というのは、銃本体で決まるわけじゃない。使う弾薬、より正確にいうと薬莢のデザインで決まるんです」
「銃弾」は、大まかにいって2つのパーツから成る。実際に目標物に向かって飛んでいく「弾頭(弾丸)」部分と、その弾丸を打ち出すための火薬や着火用の雷管などを詰めた容器、すなわち「薬莢」部分だ。この薬莢の形状や大きさが重要だ、というわけだ。
「例えば、同じ車でもステーションワゴンとピックアップトラップでは、エンジンのデザインが違う。それは“用途”が違うからですよね。前者が主にヒトを運ぶとしたら、後者は主にモノを運ぶのに適したエンジンにデザインされている。銃についても同じです。用途によって薬莢のデザインが変わる」
銃も車も密閉された容器の中で燃料を燃焼させ、その熱エネルギーを運動エネルギーに変換するというメカニズムは同じだ。
「銃において、車のエンジンつまり『燃焼室』に当たるのが、薬莢なんです。薬莢の形状や容積、さらに燃やす火薬の性質によって銃の性能は変わる。どういう薬莢を選ぶかは用途、つまりどんな獲物を狙うかによるわけです」
例えば狙う獲物がシカであれば軽い弾を高速で飛ばしてより早く獲物に到達させた方がいい。だがヒグマを狙うのであれば、殺傷力の高い重たい弾をじっくり時間をかけて飛ばした方がいい。狙う獲物が決まれば、弾薬も自ずと決まってくるのである。