タイムカードが導入されても変わらない実態
NHOでは、2016年に都城医療センターで当時20代の事務職の男性が過労自殺し、労災認定されたことなどを受け、ICカード式のタイムカードによる勤怠管理の試験的な導入を一部の病院で開始。今年4月からはすべての病院に導入される予定だ。
だが、大阪南医療センターの看護師は実態をこう語る。
「今年2月からタイムカードが導入されました。しかしなぜか、始業と終業のハンコ管理は変わっていないんです。ハンコで承認された出退勤時間と、タイムカードの打刻が30分以上ずれていたら、そのズレの理由を師長に報告しなればいけません。でも結局、そこで『残業しました』と言っても怒られるか、残業代を認められないかのどちらかです」
他病院の看護師もこう続ける。
「NHOは昨年から急ピッチでタイムカードの導入を進めていますが、端末で看護師が入力した残業は、上司の決裁が無ければそもそも勤務として登録されません。上司が入力内容を訂正することも可能です。手書きで勤務時間を管理していた時と何も変わらないんです」(東近江総合医療センター看護師)
「うちも勤怠管理がタイムカードになりましたが、病棟師長によるチェックの段階で、本人への告知なしに勝手に残業がなかったことにされている病棟がありました。給与明細を確認して、明らかに残業代が少なかったことで気付いたそうです。無断カットも病棟によっては常態化しており、看護部長も把握しているはずですが、お咎めなしのままです」(横浜医療センター看護師)
勤務時間を“改ざん”されるのは看護師だけではない。
「私の病院では事務職の一般職員のほとんどが過労死ラインの月80時間を超え、100~180時間の残業をしています。タイムカードの打刻で勤怠管理をしていますが、残業としてつけていたものをいつの間にか上司に『自己研鑽』として勝手に処理され、45~60時間におさまるよう修正されています。昼休憩の際は食事よりも少しでも睡眠を確保しようと仮眠をとっています」(NHO病院の事務職)