今回、割といい感じでパリオリンピックでメダルを獲得し続けている日本勢。もちろん、柔道や体操ほか伝統的に日本が強いお家芸的なスポーツでも頑張っておりますが、それ以外の新スポーツでも世界的な舞台で健闘する日本人選手が大活躍しております。

 これ、ほんのり選手強化や競技のアナリティクスでご一緒していると、「たまたま」「一過性で」日本人選手がイケてるだけなのではなく、中長期的に日本人選手のスポーツ能力が底上げされ続けてきていることが分かります。選手個人個人や、コーチ、協会の努力がメダルという形で実を結ぶのは素晴らしいことですね。

スケボーの世界には国境も体育会も存在しない ©JMPA

 私の良く知る野球だけでなく、ルールに基づいて個人や団体で取り組むスポーツでは、日本は割と選手強化が上手くいっていて、かなり実を結びつつあるよなあというところを概観で書きたいと思います。

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 競技によって差はありますが、選手の強化にあたっては日本でもかなり分野ごとのアナリティクスと、強みに応じたトレーニングが奨励されるようになってきました。上下関係によるコーチングで精神論中心の漫然とした練習から、具体的な選手の特性に応じた勝つポイントを押さえたトレーニングへと強化方法がバージョンアップされることで、選手の能力が伸びて世界で戦えるところまできているのです。

昭和の時代の体育会系な運動部の否定にも繋がっている

 ただ、その過程はそう平坦ではありませんでした。日本大学アメフト部などで問題となった「パワハラや危険なプレー」による負傷を起こさない指導法の徹底が広がったことや、コロナ禍で集団での練習が忌避されるなかで「練習量の制限と、休息、栄養のバランス」を見直す動きが進んだことは僥倖でした。練習の効果に対してきちんと話し合う機会が増えたのは間違いありません。

 これらの事象が、結果的に日本の選手強化にダイレクトに繋がった面は否定できないでしょう。

オリンピック2大会連続金メダルの堀米雄斗 ©JMPA

 また、協会や大学が口を揃えて選手強化に意味があったと話すのは、未成年の飲酒に対して世間も厳しい目を向け、若い選手も節制の意味を理解するようになったことです。一部選手に喫煙など素行の問題が出て騒ぎにはなりましたが、全体で見れば酒を飲まない、タバコを吸わない選手が増えました。

 運動強化に価値があり、視力がダイレクトに影響するスポーツでは、未成年時のアルコールの影響は少なくなく、才能を開花させる前提として飲酒や喫煙の影響を排除できたことにあります。

 これは、古き良き昭和の時代の体育会系の運動部的な育成手法の否定にも繋がっています。「根性を入れろ」「水を飲むな」「我慢して集中して取り組め」という精神論は、物事に集中して成果を出すタイプのスポーツでは常に弊害となっていました。

 選手の性格にもよりますが、一般的には選手に「辛い練習を乗り越えた」という自信があっても、プレイ時の集中力と、それによって導かれるパフォーマンス(結果)にはほとんど寄与しないことも分かってきています。