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連載NHK大河ドラマ「真田丸」の舞台 真田氏ゆかりの地をめぐる

第9回【芳泉寺】信幸(信之)の愛妻・小松姫が眠る寺

『真田三代』 (火坂雅志 著)

2016/02/27

genre : エンタメ, 読書

芳泉寺本堂の南にある弁天池。かつてここに小松姫の宝篋印塔と御霊屋が建てられていた
小松姫の墓。石垣積み基壇上の二重塔身宝篋印塔には姫の経歴が刻まれている。「真田伊豆守朝臣信幸才女」の「朝臣」は朝廷の位の中で天皇に次ぐ上から2番目の地位。すぐそばには信幸(信之)の子、信吉が寄進した石燈籠が建てられている
小松姫の墓の北には信幸(信之)が松代に移封された後に上田城主になった仙石家の霊廟がある
立派な造りの芳泉寺本堂。上田城築城の際、真田氏が千曲川の左岸にあった常福寺の住職を連れて来て、この地に常福寺を建立。信幸(信之)が小松姫の御霊屋をこの地に建てたとき、大英寺という名称に変更。その翌年、信幸(信之)の松代移封の後、小諸から上田城主となった仙石忠政が小諸の宝仙寺をここに移し、同じ読みの芳泉寺とした
真田の六文銭、仙石氏の永楽通宝銭、松平の葵、浄土宗月影杏葉 (つきかげぎょよう)の4つの家紋・宗紋をもつ

 ちなみに第一次上田合戦直前の、昌幸が上田城の築城中の天正12年(1584)6月、家康は室賀氏の当主・室賀正武に昌幸暗殺の命を下す。室賀氏は小県郡を支配していた有力国衆(地方豪族)の1つで昌幸のライバル的存在。NHK大河ドラマ「真田丸」でもことあるごとに昌幸に楯突く正武の姿が描かれている。しかしそこはさすが昌幸、室賀氏の家臣の中に内通者を作っており、その暗殺情報を事前にキャッチ、上田城に室賀正武を誘い出し、逆に殺した。昌幸の方が一枚も二枚も上手だったということだ。その後、室賀正武の妻子も自殺を図るが、常福寺(現・芳泉寺)の住職がこれを止めて、善光寺に逃がした。その指示は昌幸が出したと考えられている。正武が昌幸を暗殺しようとしたのは事実だが、妻子にまではその罪はないということだろう。昌幸の情の深さがうかがえるエピソードだ。

芳泉寺

所在地:長野県上田市常磐城3-7-48

真田三代 上 (文春文庫)

火坂 雅志(著)

文藝春秋
2014年11月7日 発売

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