見えにくい「仕分け」の大変さ
災害が発生すると、ニュースでは現地での水や食料、衣類や毛布などの不足が報じられます。近年はSNSでも「土砂崩れで○○地域が孤立して、食料も水も足りません!」といった発信をよく見かけます。「足りないのだから送ってあげたい」「我が家では使わないけど、避難所では役に立つかもしれない」と考えるのは自然なことで、災害のたびに被災地の避難所には個人からの救援物資が大量に届きます。その中には折り鶴や、「頑張ってください!」などと書かれた寄せ書きなど、「気持ち」に向けられたモノも含まれます。
ただ、個人がモノで被災者を助けるのは、なかなか難しいものがあります。そもそも物流があちこちで止まってしまっている状況で、必要とされているモノが必要なタイミングで届くとは限りません。
さらに大きな問題は、人が足りていない被災地では、届いた物資の仕分け作業に割ける人数も限られるということです。東日本大震災以降、長く各地で支援を続けられてきた電気通信大学准教授の佐藤賢一さんは、一般の人が考える仕分けと、実際に行われる作業の違いをこのように図解します。
図1:一般の人が想像する仕分け
図2:実際の仕分け例
梱包は必ず布のガムテープで!
図2はあくまでも一例ですが、左端の「物資(個人)」を「宅配業者」を介して避難所に送ろうすると、いきない「滞留」してしまうことがわかります「支援団体」による輸送でも、「中古品」「不用品」は野ざらしになったり、再梱包されて滞留していることがわかります。
かりに個人の救援物資が届いたとしても、多くの場合は一箱にさまざまなモノが詰められていたり、梱包がほどけていたり、業務用ホッチキスで封をされていたために(必ず布のガムテープで!)開封の際にケガをしたりと、仕分けには苦労が絶えません。苦労して開けてみたら、数日前の弁当や着古した下着が出てきた……目の前が真っ暗になってしまいそうです。
平成30年7月豪雨でも当初は救援物資を受け付けていた倉敷市が、配送作業の停滞のため7月10日から受け入れを一時休止しています。NHKの取材に応えた市の担当者の「ニーズと合っていない秋冬の衣服などの提供も多く、避難所のスペースを圧迫してしまっている」「必要とされている物資をしっかり届けるためにも休止を理解してほしい」というコメントには、善意に応えきれない苦渋が滲んでいます。