きょう8月25日は、「即席ラーメン記念日」である。これは、いまから60年前の1958(昭和33)年のこの日、日清食品(当時の社名はサンシー殖産)が即席麺「チキンラーメン」を発売したことに由来する。
“百福の妻”がヒロインの朝ドラ『まんぷく』
お湯を注げば3分でできるチキンラーメンを発明したのは、日清食品の創業者・安藤百福(ももふく)だ。この10月よりスタートするNHKの連続テレビ小説『まんぷく』では、百福の妻・仁子(まさこ)をモデルにしたヒロイン(演じるのは安藤サクラ)が、夫(同、長谷川博己)と失敗を繰り返しながらインスタントラーメンを生み出すまでを描くという。
事実、安藤百福の人生も成功と失敗の繰り返しであった。1910(明治43)年、当時日本の統治下にあった台湾に生まれた百福は、幼くして両親を亡くし、呉服屋を営む祖父母に育てられた。祖父を手伝いながら商売を学んだ彼は、22歳で独立、メリヤス販売で成功を収める。やがて大阪で繊維の問屋業務を始め、事業を拡大していく。戦時中の物資統制下では繊維の仕事はやりにくくなったが、バラック住宅の製造や軍需工場の経営など、新たな事業に取り組んだ。しかし、軍需工場で資材を横流ししているとの罪を着せられ、憲兵から拷問を受けたこともある。
逮捕、無一文から即席麺を開発
終戦後もさまざまな事業を興したが、脱税容疑による逮捕(すぐに釈放)、さらに理事長を務めていた信用組合が破綻し、それまで築いた財産を失う。大阪府池田市の自宅にこもった百福が、再起を期して着手したのが即席麺の開発だった。戦後の食糧難のなか、食の大切さに気づいた彼は、かねてより食に関する仕事への転身を考えていたという。麺づくりを選んだのは、闇市に出かけた折、飢えた人々が屋台のラーメン屋に並ぶ光景が強く記憶に残ったからだ。
自宅の庭に建てた10平方メートルほどの小屋を研究所にして、丸1年、休みなしで開発に没頭する。開発にあたり課題となったのは保存性と簡便性の両立。これを実現するのに、ヒントとなったのが、台所で妻のつくる天ぷらだった。
天ぷらのように高温の油で揚げた麺は、水分が抜けて無数の穴が開く。熱湯を注ぐと、その穴からお湯が吸収されて、麺がすぐに柔らかさを取り戻し、手軽に食べられるというわけだ。
油で揚げることによって、麺はほぼ乾燥状態になり、長期保存も可能となる。「瞬間油熱乾燥法」と名づけられたこのつくり方は、即席麺の基本的な製法特許となった。