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沖縄県知事選 発言で読み解く「沖縄vs.安倍政権」と「日本会議」

一騎打ち、その対決の構図とは

2018/08/25
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玉城デニー 自由党・衆院議員 
「オール沖縄は、イデオロギーではなくアイデンティティーだ」 
朝日新聞デジタル 8月20日 

 玉城氏は自らを「保守」と称している。20日、TBSのラジオ番組に出演した際は「安全保障や自衛隊の考え方についても、私たちは保守的な考えを持っている」と発言。「(翁長雄志知事を支持してきた)オール沖縄は、イデオロギーではなくアイデンティティーだ」と語った。「イデオロギーよりアイデンティティー」とは翁長氏が生前語っていたスローガンである。 

 2014年に行われた沖縄知事選で辺野古移設反対派である翁長氏を支援する枠組みとして築かれたオール沖縄は、保革を超えた政治勢力である。玉城氏は「ウチナーンチュ(沖縄の人)が歴史や文化や自然、自分たちの暮らしを見つめた時に、一つになれるものを求めて政治を展開していこうと言ったのが翁長知事だった」と説明。オール沖縄の国会議員からは「保革を乗り越え、翁長氏の遺志を継げる立場として適任だ」との声も上がっている(朝日新聞デジタル 8月22日)。 

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翁長沖縄県前知事 「転向」のきっかけは高校教科書問題

翁長雄志 沖縄県前知事 
「安倍総理は日本を取り戻すとおっしゃっておりますが、この中に沖縄は入っているのでしょうか。沖縄が日本に甘えているのでしょうか、日本が沖縄に甘えているのでしょうか」 
WEBRONZA 8月22日 

 翁長氏は保守政治家の家系に生まれ、かつて自民党に所属していた生粋の保守政治家である。自民党県連幹事長時代は辺野古移設の旗振り役を務めていたこともあった。 

©iStock

 転機になったのは、2007年の教科書検定問題だった。高校の歴史教科書で沖縄の「集団自決」(強制集団死)の「日本軍に強いられた」などの文言を削除・修正する検定意見が出たとき、検定意見撤回を求める県民大会の実行委員会に加わった。翁長氏は「ウチナーの先祖があれほどつらい目に遭った歴史の事実が無かったことにされるのか」と憤った(琉球新報 8月9日)。 

 2013年1月、那覇市長としてオスプレイ配備撤回を求める東京行動に参加した際は、沿道から「売国奴」「琉球人は日本から出て行け」などの罵声を浴びた。むき出しの沖縄差別に「衝撃を受けた」という翁長氏は翌年の知事選への出馬を決意する(沖縄タイムスプラス 8月9日)。上記の言葉は、東京行動の際に行われたスピーチからの抜粋である。 

 翁長氏の主張について、ジャーナリストの江川紹子氏は次のようにまとめている。

「日米安保体制の重要性は理解する。(中略)日本全体で日本の安全を守る覚悟をもって、平等に基地を負担するなら沖縄も応分の負担を引き受ける。しかし、米軍基地のほとんどを沖縄県に押し付け、その状態を今後も永続させようとする安全保障政策は受け入れられない」(ビジネスジャーナル 8月21日)。 

「保守、革新を乗り越えて、県民が一つにならなければ、日米政府という絶大な権力と闘えない」と感じた翁長氏はオール沖縄を築き上げた。「保守と革新に分かれて白黒闘争している場合じゃない。そんなことをしているから、上から見て笑っている人がいるんじゃないか」(WEB RONZA 8月22日)