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すべてを決める「歩頭の桂」
銀打ちで投了かと思われたが、永瀬は指し続ける。もちろん藤井は容赦などしない。しかも、あの67分の長考以降はすべて10分未満で指している。藤井はあのとき見つけた道筋をただ走っているだけなのかもしれない。
永瀬が跳ねた桂を藤井がむしり取り、それを中段に打つ。これは詰めろではないが、自玉にそれよりも早い手がないことを見抜いている。
そして最後は、歩の頭に桂打ち!
藤井は、初めてのタイトル戦である2020年の棋聖戦第1局も、名人奪取の1局も、すべて「歩頭の桂」で決めてきた。1勝3敗からの3連勝という歴史的な防衛劇も、最後はこの手で決めたのだ。この桂を取れば、角で王手竜取りがかかる。取らねば永瀬玉は寄る。永瀬は1分ほど盤面を眺め、そして静かに頭を下げた。
89手にて藤井の勝ち。終局時刻は15時34分。消費時間は藤井が5時間28分、永瀬が7時間12分。終局時間が最も遅かったのは第1局の19時36分。本局はシリーズ全体で最も早い終局となった。
終局後のインタビュー
「全体として厳しいシリーズだったと感じています。特に後手番の時に作戦負けからそのまま押し切られる将棋が多かったので、そのあたりは大きな課題だったかなと受け止めています」
藤井は終局後のインタビューでそう語った。
対して永瀬は56手目の角成を悔やみ、3筋の歩を突かれた局面で「展望があまり浮かばず、困ったなという感じはしました」と、1日目の時点で苦境を悟っていたことを正直に吐露した。


