圧力で北は動かない。国交正常化交渉を再開すべきだ
トランプ大統領の大げさで強気な事前の発言と比べると、6月12日の米朝首脳会談で合意された内容は大きくトーンダウンしていました。アメリカが固執していた「北朝鮮の完全で検証可能かつ不可逆的な非核化(CVID)が前提であり、達成された後に制裁解除や見返りを与える」という事前のロジックが、「米朝の信頼醸成が非核化を促進する」と、北朝鮮に大きく譲歩する形で変容していたからです。具体的で明確な合意や今後のロードマップもなし。そういう意味では“期待外れ”だったかもしれません。
しかし、私は今回の米朝首脳会談での合意が示す方向性は正しいと考えています。「非核化のためにまずは信頼関係を作りましょう」という考え方は、かつて私が外交官生命を賭して準備した小泉純一郎首相の訪朝、日朝平壌宣言の基本的な考え方と一致しています。
CVIDが達成されるまでには物理的に長い時間がかかります。北朝鮮は全ての核施設を正確に申告して査察を受ける必要がありますし、詳細な廃棄計画を作っていかなければなりません。5年か、あるいは10年か。少なくとも、トランプ政権下で北朝鮮の非核化が終結する可能性は薄いと考えていいでしょう。
今後、北朝鮮問題がどういう道筋で解決に向かっていくのかには、不透明な部分も多々あります。
しかし、日本にとって確かなことが一つだけあります。
それは、「米朝で核の問題が動いている時が、拉致問題を解決する唯一のチャンスである」ということです。滅多に訪れないこの大きな機会をどう活かせるか。今、日本の外交手腕が大きく問われているのです。
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source : 文藝春秋 2018年08月号