思い出と辿る100人
新年特別号の「100年の100人」、どの人の評伝から読もう? とちょっと思案したが、やはり大学時代民俗学を専攻したので「柳田國男」からかとページをめくった。お孫さんの文章では「2万冊の蔵書すべてに印が」と。氏の博覧強記の源はそこにあったのだなと納得した。我が蔵書「定本柳田國男集」三十数冊さえ私は十分読みこなしていないというのに。
次はやはり「夏目漱石」。中学時代『坊っちゃん』を読んでからこれまでほとんどの小説を読んできた。もちろん『道草』も読んだが、やはり私の一推しは『三四郎』だ。
同じ頃、私を夢中にさせたのが松本清張だった。東京・渋谷に大盛堂という書店があり、あるとき店頭に『蒼い描点』という推理小説が堆く積まれていた。見ていると、次々に買われていく。それで私もつられて買い、帰りの電車で読み始めたら終わらない。これが病みつきの始まりであった。
挙げればきりがないが、そんな中で失礼ながら私が名前さえ存じ上げない方が4人おられる。大山倍達、渡辺和子、おそめ、辰野金吾の方々。これを機に、と各氏の評伝を丁寧に読ませていただいた。その世界では右に出る人はないぐらいの存在だと知り、無知で、穴があったら入りたいといった心境である。
(安達郁雄)
闘病記のすすめ
本誌1月号の塩野七生さんによる闘病記『ローマでの“大患”』、小椋佳さんの『静かに消えていきたい』を読んで考えさせられている74歳の老人です。
実は私も1年8ヶ月前に生まれて初めての入院、手術を経験しました。
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source : 文藝春秋 2022年2月号