「政治資金規正法はザル法だ」検察OBが緊急提言!
1月19日、自民党の政治資金パーティー裏金問題について、東京地検特捜部は各派閥の会計責任者ら事務方のほか、7日に逮捕された池田佳隆議員(起訴は26日)に加え、大野泰正議員の在宅起訴及び谷川弥一議員の略式起訴など、議員3人を刑事処分に付した。しかし、安倍派(清和研)の事務総長経験者ら幹部の刑事処分が見送られたことに、国民の間では失望の声が上がっている。国会では衆参両院で政治倫理審査会が開催され、注目の安倍派幹部も出席し事件について弁明したが、国民の不満が解消されたとは到底言えない状況にある。
私は、過去に自分自身が政治資金規正法違反事件の捜査を指揮した経験や裁判例から見て、マスコミ各社が安倍派幹部の立件に焦点を当てて過熱した報道を始めた当初から、議員の刑事責任を問うのは難しいと予想し、その反動で検察批判が過激化しないかと案じていた。だが、「ザル法」と言われている規正法を適用して議員3人を刑事処分に付した検察の事件処理は、評価できるものであると受け止めている。
政治と金の問題は古くからあり、この先も起こりうる永遠の問題である。いま、再発防止に向けて規正法の改正が議論されているが、現行の規正法の問題点はどこにあり、どのように改正すべきか、今回の事件を通して、捜査に当たる検察の立場から私見を述べてみたい。
忘れがたい金丸5億円事件
まずは私の履歴を簡単に紹介しておきたい。私は1966年4月、検事に任官した。初任地の東京地検で特捜部が捜査していた政界の「黒い霧事件」に末端の応援検事として参加させてもらった。
初めて特捜部入りしたのが検事11年目の1977年3月で、財政経済係として主に脱税事件の捜査公判を3年間担当した。この時の部長がロッキード事件の主任検事でのちに検事総長になった吉永祐介さん、直属の副部長がロッキード事件で田中角栄氏を取り調べた石黒久晫(ひさあき)さんで、この2人から厳しい指導を受け、特捜検事としての基礎を作ってもらったと思っている。
私が特捜部長に就任したのは1991年1月。89年末の日経平均株価が史上最高値の3万8915円で、バブルの崩壊と機を同じくして特捜部長を務めることになった。この時期は社会のいたるところにバブル崩壊に伴うひずみが発生し、様々な形で事件として表面化したため、捜査に事欠くことはなかった。
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