「官邸や他派閥に交渉力がある5人」。世耕弘成はそう誇っていた。
だが、裏金疑惑で全員が辞任。最大派閥の自壊は当然の帰結だった
すっかり盲点を突かれた――。
自民党の国会議員たちは斉(ひと)しくそう臍(ほぞ)を噛む。東京地検特捜部による過去、類を見ない党5大派閥の裏金捜査が進行している。特捜部の狙いは政治資金パーティー収入のキックバックを駆使した裏金づくりだ。昨年2月13日の国会会期末を待って、疑惑の国会議員に対する本格捜査に乗り出した。2024年の政界は文字通り、波乱の幕開けとなる。
報道の火付け役は12月8日、〈松野官房長官に1000万円超 裏金か〉と題した朝日新聞朝刊の特ダネだ。臨時国会会期中にもかかわらず、新聞報道が過熱したのも異例だった。瞬く間に報道合戦が始まり、地検のターゲットが安倍派(清和政策研究会)の重鎮たちだと世間に伝わった。内閣官房長官の松野博一をはじめ、経済産業大臣の西村康稔や自民党政務調査会長の萩生田光一、党国会対策委員長の高木毅、参院幹事長の世耕弘成である。検察は五人衆と異名をとる安倍派幹部を狙い、捜査の号砲を鳴らした。
もっとも検察捜査の受け止め方は当初、五人衆それぞれに異なっていた。真っ先にやり玉に挙がった松野は、むしろあっさりと官房長官の辞任を受け入れた。事実上の更迭である。が、残る4人は粘った。安倍派の現役幹部議員が打ち明ける。
「西村さんは報じられたキックバックが100万円前後なので、その程度で俺が辞めなければならないのか、と反発し、萩生田さんは来年度予算成立の任務がある、と辞任を渋った。岸田(文雄)さんは最初、安倍派の副大臣、政務官を含めた15人の交代を求めたが、萩生田さんは彼らを守る、と格好をつけ、岸田さんが折れて政務官は1人だけの辞任となりました。あの5人は表向き仲よく見えるけれど、実は足を引っ張り合っている。とくに西村、高木、世耕の三方は、自分だけが生き残ろうと、いちばん傷が浅いのは俺だ、とそれぞれが言っている始末です」
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source : 文藝春秋 2024年2月号