「忖度から捜査のメスへ」特捜検察取材歴40年の事件記者が解き明かす「検察VS安倍派」怨念の歴史

村山 治 ジャーナリスト

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東京地検特捜部が、ついに最大派閥・安倍派に切り込んだ。かつて安倍派を率いた故・安倍晋三氏は総理時代、検察の人事に介入。森友学園、加計学園、桜を見る会などの疑惑もあったが、検察の追及を大過なく切り抜けてきた。一体なぜ、ここにきて安倍派に捜査のメスが入ったのか。村山治氏は毎日新聞、朝日新聞の記者として、大型経済事件や政界を巻き込む疑獄事件などを取材。2017年にフリージャーナリストに転身した。『安倍・菅政権vs.検察庁 暗闘のクロニクル』(文藝春秋)などの著書のある〝特捜検察取材歴40年〟の事件記者が、検察組織に内在する「論理」から解き明かす。

桜を見る会で聴衆を前に演説する安倍氏 ©時事通信社

 巨額の裏金疑惑が、師走の永田町を揺るがしている。2023年12月19日、東京地検特捜部がパーティ券収入を組織的に裏金化していたとする政治資金規正法違反(不記載・虚偽記載)容疑で、自民党安倍派(清和政策研究会)と二階派(志帥会)に対する強制捜査に踏み切った。疑惑の広がり、深さから「令和のリクルート事件」とも呼ばれる政治とカネを巡る構造不正。なぜいま、検察はメスを入れたのか。

安倍派5億、二階派1億超のキックバックの構図

 まず、各社の報道をもとに簡単に疑惑の概要を整理したい。

 安倍派と二階派では年1回、政治資金パーティを開催している。所属議員は当選回数や役職に応じてパーティ券(1枚2万円)の販売ノルマがあり、ノルマを超えた分の資金は議員側に還流する仕組みだった。両派とも、派閥の収支報告書にはノルマ分のみを収入として記載。超過分は記載していなかった。これは虚偽記載罪などに当たる。時効が完成していない2018~2022年の5年間で、最大派閥の安倍派の不記載額は約5億円、二階派も億単位に上るという。

 さらに安倍派では、議員側への還流を支出として記載せず、裏金を受け取った議員側も、派閥の指示で自身の政治団体の収入に載せなかった疑いがある。一方、二階派は議員側への還流は支出に載せ、議員側も寄付収入として記載していたとされる。

 特捜部は、ノルマ超過分すべてを組織的に裏金化した疑いがある安倍派が最も悪質と見ているが、不記載額が大きい二階派も含め、ともに指揮系統解明のため強制捜査に踏み切った。

安倍派事務所の家宅捜索に向かう特捜部 ©時事通信社

 安倍派では99人の所属議員の大半が、裏金の還流を受けたと報道されている。事実上のトップである座長の塩谷立、「5人衆」とされる官房長官の松野博一、党国会対策委員長の高木毅、党参院幹事長の世耕弘成、党政調会長の萩生田光一、経済産業相の西村康稔についても、1000万円超~約100万円の裏金の還流を派閥から受け、政治資金収支報告書に記載しなかった疑いがあるという。松野は、政治資金を含め安倍派の実務を取り仕切る事務総長を2019~2021年、西村は2021~2022年、高木は2022年から現在まで務めていた。

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